第六話「川沿いの公園のブランコ」



 山●県のトンネルに続き、今度の場所は関●地方、●川市にある川沿いの公園だった。

 送られてきたURLを開くと、夕暮れ時の公園の風景が広がる。

 遊具のある広場と、その向こうに穏やかな川。その岸辺に、ひとつだけ揺れているブランコがあった。


 誰もいないのに、風もないのに、ブランコだけが小さく前後に揺れている。

 奇妙に感じながらもカメラを回していくと、公園の奥にあるトイレの入り口で手が止まった。


 そこに、誰かが立っていた。


 影の中に沈んだ人影。顔までは見えない。

 しかし、ページを戻すと、ブランコの位置にその人影がいたことがわかる。

 数フレーム進めるごとに、人影はじわじわとカメラに近づいてくる。


 トイレの入り口、ベンチの横、水飲み場、そして——


 次のフレームでは、画面いっぱいに“顔”があった。



---


 動画を投稿したあとのコメント欄は、妙に静かだった。

 いつもなら盛り上がるはずなのに、上位にあるコメントはこうだった。


> 「この動画、なんか音入ってる。耳を澄まして」

「イヤホンで聴いて。10分20秒のとこ、女の声がする」

「“見てる”って聞こえる。マジで気分悪くなった」




 恐る恐る、自分でも再生してみた。

 10分20秒——確かに、女性の声で「みてる……」と聞こえる。

 それも、動画とは無関係の“俺の部屋”から録ったような音質で。



---


 録画用のPCを確認した。何の操作もしていないのに、また録画ファイルが増えていた。

 日付は今夜、まだ開いてもいないファイル名だ。

 ファイルを開くと、暗い部屋の映像。俺の部屋ではない。


 壁、机、そして——カメラのすぐ近くにある、同じ形のブランコ。


 その奥から、白い服を着た女がこちらに歩いてきた。

 画面がざらつき始め、女が口を開く。


 「つぎ、見つけたよ」


 その瞬間、LINEに通知が届いた。


> 「ここ、知ってるでしょ?」




 添付されていたのは、俺の出身地の住所。

 GoogleストリートビューのURLは、俺の母校の校門前だった。



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