第四話「墓地の曲がり角」

第四話「墓地の曲がり角」


 次のURLは、日本の●県にある古い墓地を示していた。

 ストリートビュー対応地域では珍しい、細い参道の奥までカメラが進んでいた。

 そのこと自体が、すでに異常だった。


 映像を進める。苔むした石塔、歪んだ卒塔婆、雑草の生い茂る道。

 無人のはずの場所に——カメラは誰かの背中を捉えていた。


 白い服を着た小柄な女性が、墓地の奥を歩いている。

 その瞬間、マウスを持つ俺の手が震えた。


 影が、ない。


 午後の光が強く差しているにもかかわらず、彼女の足元には何も落ちていない。

 しかも、次のフレームに進むと……彼女の姿は完全に消えていた。



---


 俺は動画をアップロードした。「ストリートビューに写った女幽霊」と題して。

 コメント欄はまたも祭り状態だった。


> 「この墓地、私の実家の近くだ…本当にあるよ」

「この女、ずっとカメラ見てない?」

「ストリートビューのタイムライン、2017年にもいた」




 俺はすぐに2017年版のストリートビューを開いた。

 言われた通り、その年にも女の姿はあった——同じ服で、同じ場所に。


 そして、最新の映像では“いなかった”女が、なぜか2020年にはこちらを向いていた。


 年を追うごとに、女の顔がこちらに向いてくる。


 2023年には——完全に正面を向き、笑っていた。



---


 その日の夜、カメラがまた勝手に起動した。

 録画ファイルを確認する。そこには墓地の映像が映っていた。


 俺の部屋に設置されたカメラで、なぜか墓地の映像が録画されていたのだ。


 しかも、映像の最後——画面の奥で、白い服の女が手を振った。



---


 LINEに通知が入る。


> 「次は、トンネル。」




 添付されたGoogleマップのリンク。

 そこは、●県●市、封鎖されたはずの旧トンネルの中だった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る