君にラブレターを届ける旅 ~恋と奇妙な青春讃歌~

すはな

ボーイミーツガール

 ラブレター 1枚目

 クロエ様へ


 A I技術が発展するようになった時代に、こんなレトロな手紙を書くことになるだなんて、夢にも思わなかった。

 ぼくらが別れてから、大体1年が経ったね。中学生になる前に別れたもんだから、今の君がどんな制服を着て過ごしているのか、すごく気になる。どんなことをしているのかってことも、すっごく気になってる。

 でも、久しぶりに君と会ったら、きっとぼくは穏やかじゃなくなると思う。君も知ってると思うけど、ぼくはあの頃から変わらず、周りの人達からは、口数の少ない無口なヤツだと思われたまんまだ。会えなくなって寂しいって思っていても、1年って時間は、人が変わるにはちょっと足りないように思う。


 ……前置きが長くなって、ごめん。

 要するに、ぼくが言いたいことは、ずっと会えないまま、ぼくらの関係が無くなることが嫌だったってことなんだ。ぼくらはまだ小さかったし、お互いの親の教育方針――かどうかは知らないけど、とにかくスマホを持たせてもらえなかったから、連絡先の交換も出来なかった。しかも、君が引っ越すところの住所も確認しそびれたから、手紙を送ることも出来なかった。会いに行くことも、出来なかった。

 当たり前だと思っていたものが、そうじゃなかったって気付いた。その時、ぼくの中で、君とまた会えると思い込んでいたことは、強い後悔となって、膨れ上がっていったんだ。


 これは、ぼくの気持ちを示すための記録――ラブレターだ。

 クロエ。ぼくは君に会いたい。会って、いろんなことを話したい。でも、上手く言葉に出来ないかも知れないから、あらかじめぼくの気持ちを文字にして、きちんと伝えられるよう、準備しておこうと思う。

 これはそのための手紙だ。これを君に届けるため、ぼくは旅に出ることを決めた。

 おかしな話だろう? 自分でもそう思う。だけど、ぼくの素直な気持ちを、誤解なく、余すことなく伝えるには、一番いい方法だと思ったんだ。

 そうすることで、ぼくは文字通り、一歩踏み出せる気がしたんだ。

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