第2話

02

仁野 理人——

やっぱり俺のインスピレーションの源泉は彼だった。

怒涛の勢いで四千字の長文を一気に書き上げて、満足げに編集に送った。

すると、返ってきたのはひと言。

【で、もう一人の主人公は?彼のCP(カップリング)は誰?】

……CP、ね。

仁野の相手にふさわしいのって、どんな人だろう?

彼はクールだ。だったら相手は——もっと情熱的なタイプがいいかもしれない。

できれば、ちょっと儚げで、守りたくなるような子とか。

あるいは……

【君がちょうどいいんじゃない?】

編集は、躊躇なく言い放った。

【は?なんでそうなる?】

【最近の読者はね、両極端のキャラが恋に落ちる話が大好きなのよ】

——両極端。

……仁野は、あらゆる意味で“強者”側の極端。

ということは、俺は——

【……編集さん、ありがとね(泣)】

数話アップしたばかりなのに、

この作品、まさかのバズった。

更新を催促するコメントが、もう、止まらない。

編集は、にっこにこでこう言った。

【やっぱり仁野みたいな主人公、読者の心をつかむよね〜】

俺はコメント欄をスクロールしてみた。

【聡太×仁野、最高すぎる……!仁野があんなポンコツ聡太を受け入れてくれるなんて泣ける】

【仁野カッコよすぎ!てか聡太、今日はちゃんと上着着てる(笑)】

【聡太マジでアホ。でも仁野が頭いいから大丈夫】

【このカプ、なんかヤバい……クセ強い……けど好き……いややっぱ変……でも好き……】

……。

【見たでしょ?この二人のCP、めっちゃ人気あるって!】

編集からのメッセージが届く。

【で、そろそろ怒涛の二万字執筆、どう?】

……

俺は作家だぞ。

生産チームのロバじゃねえ!!

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