第12話
次の日の朝。朝食を済ませ、動きやすい服装へと着替えた悠希はシャロンの案内の元、訓練場へと向かっていた。シャロンについて歩く悠希は何処か難しそうな顔をしていた。悠希は起きて早々、シャロンに聞いたのだ。呪われた子について…だがレインは呪われていないという解答しか得られなかったのだ。なので悠希は考えているのだ。これからどうすればいいのかを…
「つきました」
シャロンは外へと続く扉の前で立ち止まり、一度悠希へと顔を向けた。そして直ぐにその扉へと顔を向け、開けるとその先では既に沢山の兵が待機していた。
「皆さん早いですね」
悠希は扉の先へと足を踏み入れる。
「全員揃ってから開始ですので、一人でも遅れてしまいますと迷惑をかけてしまいますから早いんです」
シャロンは悠希のあとを追ったあと、扉を閉める。
「なるほど」
シャロンの言葉に納得した悠希はそのあと場の責任者の指示の元、ストレッチや走り込みなどをした。
「……よし!それではこれから一対一で打ち合いをしてもらう!各自、ペアを組んでくれ!」
一通りの基礎を終えたあと、場の責任者が口を開いた。それを聞いた悠希は誰と組めばいいのかと辺りを見渡し始める。
「…貴方は私とだ」
そこへレインが現れて悠希へと声をかけ、レインの登場で周囲がざわつき始める。
「え、レインさん…?今ってユフィ様の護衛中じゃ…」
そのざわつきを特に気にすることなくレインへと目を向けた悠希は困惑する。
「殿下ならあそこに…」
レインは見上げるように二階の窓へと目を向けた。悠希がその視線を追って目を向けるとそこにはユフィの姿があってユフィは悠希と目が合うなり柔らかく微笑み、軽く手を振った。
「我が隊の訓練に君を参加させて欲しいというシャロンからの申し出を受け入れたというお話をしたら見学をなさりたいとおっしゃってな。朝早くから伴侶候補とのお約束はないためお連れした」
レインは悠希へと目を向け、答える。
「なるほど…ではよろしくお願いします」
悠希は再びレインへと目を向け、一礼をする。
「ではこれを…」
レインは訓練用の剣が置いてある場所へと向かい、二本手に取った。そしてその後すぐに悠希へと近付いて一本差し出した。
「ありがとうございます」
悠希はその剣を受け取った。そのあと二人は打ち合いを始める。二人の打ち合いは激しく周囲にいた者たちは種族特有の速さではないものの何故、団長であるレインの動きに人間である悠希がついていけるのかと驚き、困惑していたがシャロンだけは平然としていた。
「……やはり契約者だな。なかなかの腕前だ」
レインは攻撃の手を止めず、楽しそうに口を開いた。
「ありがとうございます」
悠希は余裕があるように微笑みながら全力で対処をしていく。その後、二人は楽しそうに打ち合い続けたがイザークが現れた事で終わりを告げた。
「ひ弱な人間に勝てないとは…それでも団長なのか?」
イザークは馬鹿にしたようにレインを見つめ、それを聞いた周囲の兵達はイザークにいい感情を持っていないのもあってかそんなイザークを不愉快そうに見つめている。
「人間等の相手よりも俺の相手をしろ」
イザークはユフィに良い所を見せる為…部下達の目の前でレインに恥をかかせる為に腰に下げていた鞘から剣を抜いた。そして直ぐに吸血鬼特有の速さでレインへと近寄り、斬りかかった。イザークが現れた時点で悠希との打ち合いを止めていたレインは対処するように持っていた剣でイザークの剣を弾き飛ばし、弾き飛ばされた剣は運良く誰もいない地面へと突き刺さる。
「…私は貴方と打ち合うつもりはありません」
悠希との打ち合いを邪魔されたことに不満があるレインは淡々とした口調でそう言うとイザークへと背を向ける。
「くっ…このっ!」
イザークはそんなレインの態度に顔を真っ赤にして怒り、瞬時に剣へと近寄って抜き取った。そしてその後直ぐに再びレインへと斬りかかったのである。レインは振り向いて対処するように剣を振るった。だがそれが悪かった。先程まで悠希と打ち合っていた興奮が残っていたのもあってレインが振り向きざまに振った剣は風の刃のような風圧をうみ、その風圧は真っ直ぐイザークへと向かっていってしまったのだ。イザークはそれを間一髪の所で避けた。だがイザークのいた位置が悪かった。イザークは飛びかかるように斬りかかってきていた為に風圧は、二階の窓からこちらを見ていたユフィに向かって真っ直ぐと飛んでいってしまったのだ。
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