第18話
琅に噛まれたままの天月は睨み付けるように琅のことを見つめていた。
「……何故こんなことになっているのは知らん。だが大人しくあいつを返せばこれ以上、手荒な真似はしない」
琅は肩から口を離し、赤く鋭い瞳でじっと天月のことを見つめる。
「……ようやく表に出られたっていうのに大人しく言うこと聞くと思うか?答えはノーだ!」
天月はあえて肩に出来た傷を回復させず、そこから溢れる血を操って琅に攻撃を仕掛けた。
「っ」
琅は後ろへと飛び退く形でそれを避け、拘束が解かれた天月は回復が終わるまで傷ついた肩を手で押さえながら翼を使い、空高く舞い上がる。そして回復が完全に終わるまで琅から離れようと一瞬にして姿を消してしまったのである。
「……力ずくで排除するしかないのか」
琅は耳をピンっとたたせてすませ、目を閉じた。その際、琅の右耳についている月をモチーフにしたピアスが揺れて音をたてるが琅は特に気にすることなく意識を集中させる。
「……気配を完全に消し、逃げても俺には効かんぞ」
琅は小さく呟きながら目を開ける。
「……それで?危機は去ったと窓から見てわかっていたはずだ。何故来た?」
そしてそのあと直ぐに城へと目を向け、城から出てきたばかりの悠希を見つめる。
「お手伝い、しようかと思って…」
琅の目の前で立ち止まった悠希は剣を見せながら進言する。
「……これは俺たちの問題。部外者であるお前には関係ない」
琅は淡々とした口調でその進言を断る。
「ここまで関わった以上、部外者だろうが手伝います」
悠希は真剣な眼差しで琅のことを見つめる。
「……最悪の場合、天月を殺すと言ってもか?」
琅は一瞬どこか悲しげな表情をし、悠希から顔を反らす。
「…二人いれば殺さなくて済むかもしれません…というより俺が殺させません」
そんな琅の表情を見逃さなかった悠希は殺したくないのだと判断し、にっこりと微笑んだ。
「……物好きなやつもいたものだ。乗れ。小僧。人間の速さでは天月には追い付けない」
琅は自分の背に乗れと背中に目線を送った。
「よ、よろしくお願いします!」
悠希は初めての経験だと内心ドキドキしながら琅の背中に乗った。
「しっかり捕まっていろ。あと向かいながら話しておきたいことがある」
琅は悠希に向かってそういうと走り出したのだった。
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