第12話

寮に戻って部屋のドアを開けると、ルームメイトのAがタピオカミルクティーを持ってて、蘭の指を立てながらBに飲ませようとしていた。

でもBは鳥肌が立ってて、Aを軽く押し返す。二人がふざけ合っているうちに、ミルクティーが一滴残らず坂本のベッドにこぼれてしまった。

僕はドアのところで立ち止まり、後ろでドアを閉めている坂本を見て、嫌な予感がした。

案の定、AとBがふざけて坂本のベッドを濡らしてしまった。寮には4つしかベッドがなくて、Aの体重二百五のパワーとBの散らかり放題のベッドを見て、泣きそうになりながら坂本を見た。

坂本は僕の顔色を見て、かわいそうにうつむいて言った。

「隣の部屋の友達に頼んで、一晩だけ泊めてもらうよ」

こいつが演技してるのはわかってたけど、AとBは申し訳なさそうに坂本を引き留めていた。バスケ部の男たちはみんなでかいし、一つのベッドじゃ到底寝られないだろう。

六つの目が見つめる中、僕は渋々うなずいて、あいつと同じベッドで寝ることにした。

ベッドに上がって、布団を間に置いて、坂本に小声で警告した。

「越えたらだめだぞ。もし越えたら…ぶっ飛ばすからな」

坂本はベッドに座っておとなしくうなずき、上着を脱いだ。広い肩に細い腰、鍛えられた胸筋の下にははっきりと割れたシックスパックが見えた。

そして彼の長い手が腰に回り、ズボンを脱ごうとした。

「脱ぐな!」

僕は思わず短く叫んだ。ルームメイトのAが聞いてきた。

「どうした悠真?」

「な、なんでもない」

そして坂本の手を押さえて、低い声で言った。

「寝るときは服脱がないって言っただろ?ちゃんと着てろ」

坂本は僕を見て、苦笑いしながら言った。

「悠真、寝るのに服脱がない奴なんているか?」

そして顔を近づけて囁いた。

「俺のこと好きだからって、舐めるなよ」

「誰が舐めるか!」

僕は押し返して真っ赤な顔で睨んだ。

「ダメだ。もしここで寝るなら脱ぐな」

僕が強く抗議したので、坂本は一歩下がり、上着を着てズボンだけ脱いだ。

男子寮は一人用ベッドで、僕は痩せてるけど身長180cmの大男。坂本はもっとでかい。二段ベッドの幅は狭い。

体から熱が伝わってきて、彼の動きに緊張した。もし夜中に襲われたらどうしよう?ずっと見張らなきゃ。

2時間ほど緊張しっぱなしで、だんだん瞼が重くなってきた。隣の男はもう寝ているらしく、全然動かない。

坂本が部屋にいるときは何もできないみたいで、安心して目を閉じた。

夜、夢を見た。巨大な蛇にぎゅっと巻き付かれて、どんなに抵抗しても逃げられない。蛇の頭が高く持ち上がり、僕の顔に向かって襲いかかろうとしている。温かい呼吸まで感じられるほど近い。

ハッと飛び起きた。

そしたら後ろから坂本がしっかり抱きしめていて、頭も顔も僕に密着していた。熱い体温がシャツ越しに伝わる。

僕がもがくと、坂本の腕がもっと強く締まった。背中の方で何か当たっている気もした。

全身鳥肌が立った。

もう我慢できず、彼を強く押しのけて、怒った声で言った。

「坂本!」

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