第7話

坂本を避けるために、ここ数日は早起きして遅く帰る生活を続けていた。

食事もうまくとれず、眠りも浅かった。

昨晩、少し鼻が詰まっている気がしたが、あまり気にしなかった。

その結果、午後2時までぐっすり眠ってしまった。

起き上がろうとした瞬間、頭がぼんやりして、体がだるくて力が入らなかった。

荒い息をつきながらカーテンをかき分けると、坂本が水を持ち、薬を手にして、身長190cmを超える大きな体で俺の上のベッドから見下ろしていた。

坂本の顔を見た途端、頭の熱がさらに増した気がして、頭の中は坂本がシャツの裾を噛んでいる顔ばかり浮かんだ。

坂本が俺の額に手を伸ばしたので、反射的に後ろに避けた。

ハッと我に返ると、坂本は動かず、でもその黒く輝く瞳には悲しみが滲んでいた。

「俺は……」

口を開けて説明しようとしたが、熱と脱水で声はガラガラで、まるでガチョウの鳴き声のようだった。

坂本は何も言わず、薬を手渡し、水も飲ませてくれた。

梯子を踏みながら、俺に布団をかけてくれた。

「お腹すいた?何か食べてからまた寝る?」

坂本は俺の上のベッドに座っていた。

病気の時は誰でも弱くなるけど、突然そんな坂本が、変態だけど俺の大切な親友だと思えてきた。

だから、簡単に“死刑”を言い渡せない。

もしかしたら……まだ救えるかもしれない。

「坂本、俺たち、一生の友達でいい?」

坂本は布団から出した俺の手を再び布団に戻し、正面からは答えず、ちょっと怖いほどの目つきで俺を見た。

「寝ろ。起きてもまだつらいなら、俺が病院に連れて行く。」

そう言って降りようとした時、俺は咄嗟に彼の腕を掴み、熱で赤くなった目をじっと見つめて、嗚咽を漏らしながらお願いした。

「約束してくれたら、寝るから。」

坂本はしばらくじっと俺を見つめてから、長い腕を伸ばし、急に後ろ首を掴んだ。

距離が一気に縮まり、強引な息遣いが俺をすっかり包み込んだ。

息ができなくなって、俺は彼の服を掴んで押しのけようとしたけど、力がなくて、むしろ彼を引き寄せてキスをしているようだった。

坂本は俺の手を取って心臓の辺りに当てた。

激しく鼓動する心臓が、俺が坂本にどれほど影響を与えているかを物語っていた。

坂本は後ろ首を掴んだまま、額を俺の額に寄せて、かすれた声で聞いた。

「悠真、どう思う?」

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