第4話 金田少年の事件簿。(プリン消滅事件)

「俺のプリン、食べたな!! 」


少年はバンとテーブルを両手で叩いた。その手の間にはプリンの空の容器がころがる。


その場にいたはいっせいに目を向けた。


目、目、目、三つの目線が少年を見る。


「犯人はこの中にいる!! 

いや、犯人は既に分かっている!! 」

少年、この家の長男 金田かねだはじめは声をあげた。


そう金田始は学期末試験が終わりコンビニでプリンを買い、食べようとテーブルの上に置いていた。部屋で着替えをして、そのままベットに倒れ込み眠ってしまったのだ。


残されたテーブルの上のプリン。


容疑者はソファの上で寛いている沙織さおり

同じくソファにちょこんと座っている星矢せいや

そして、リビングで転がってスマホをイジっている美雪みゆき


父、母は、まだ仕事から帰って来ていない。


「美雪、食べたのはお前だな。」

始は妹を指さした。


「な、なんで? 酷いお兄ちゃん。沙織だって、星矢だっているのに!! 」

美雪は星矢を指さした。

星矢はペロリと口元を舐めた。


「ほら、今口元を舐めた!! 」

美雪は自分じゃないと訴える。


始は静かに頭を振った。


「酷いお兄ちゃん! 実の妹を疑うの? 」


そうは、母が連れてきたであった。


「美雪、お前以外考えられない。」

「そ、そんな…… 」

美雪は絶望した目で、兄の始を見る。


「もし星矢なら…… 容器が綺麗な形で残ってはいない。」

テーブルに置かれた、プリン容器は綺麗なままだ。


始がゴミ箱に捨てられていた容器をテーブルの上に置いていた。


「沙織がなら、これ程綺麗に蓋を剥がせない!! 」

始はもう一つの証拠をテーブルの上に出した。


綺麗に剥がされたプリンの蓋のフィルムを置いた。


「沙織なら、ビリビリに。」

「そ、そんな…… 」

美雪は後ずさった。


「プリンを食べた犯人は、お前だ!! 美雪!! 」

始はいま一度、美雪を指さした。


「お、お兄ちゃんが悪いのよ!! そんな所にプリンを置いとくから!! 」

美雪は開き直った。


「もう一つ買ってきて、私にくれてもいいじゃないケチ!! 」

「人の物を勝手に食うほうが悪いに決まってるだろが!! 」

美雪は始をケチだと罵る。


「置いとく方が悪いのよ!! 」

「なら、お前が置いてるケーキを食べても怒らないな!! 」

始は冷蔵庫の中にある美雪のケーキの話をする。


「ソレとコレとは、話が別よ!! 」

「いっしょだろうが!! 」

二人の喧嘩が始まった。


「なに? 外まで声が聞こえてるわよ。」

帰って来た母が、二人に声をかける。ソファの上にいたものは、母に駆け寄った。


「ワン!! 」

「にゃん!! 」

まるで出迎えるように。


「お母さん聞いて、お兄ちゃんが酷いの!! 」

「お前が俺のプリンを食べたんだろうが!! 」

「はい、はい。」


母は腕に出迎えてくれた二匹の家族を抱きしめた。


「おーい。プリン買ってきたぞ!! 」

父がプリンを買って帰ってきた。



【完】




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