第3話 帰宅部。

それは、秒との戦い。


何も残らない優越感、達成感の戦い。


彼女は走った。

教室を出て、走った。


階段を駆け下り、下駄箱へと。

クラスメートとの帰りの挨拶もおざなりに。


ただ、走った。


校門を出て、スクールバスの乗り場まで坂を駆け下りた。


「バスは来ている? バスは待っていてくれる。」


彼女は走る。


息を切らして。


来ていたバスに乗り込む、スクールバスではない。


バスは直ぐに発車した。


指定場所で停まるバスに、どきどきはらはらする。


時計を見る彼女。


「信号は? 」

(ああ、変わらないで…… )

彼女は祈る。


駅につき、彼女は走る。


階段を駆け上がり、階段を駆け下りる。


「時間は? 電車は? 」


彼女は電車へとギリギリ乗り込む。


プルルルルル………


発車のベルがなる。


静かに閉まる電車のドア。


「間に合った…… 」


電車が動き出し、彼女は静かに空いている席につく。


次の電車は、きっと混むであろう。


優越感。


達成感。



数週間の内の一つ、時計との戦い。


だからと言って、するわけでもない。


彼女は帰宅部、なのだから。



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