「誰！？」

けっこう離れてたつもりなのに、バレた！？

私とエリーは、これ以上隠れても意味ないと判断して、彼女の前に姿を現した。

「あ、ごめんなさい！ そっちにもいたのね」

ええーっ、私たちじゃなかったの……？

彼女が指さした先、忍者っぽい格好の男が柱の影に立っていた。うわ、私たち以外にも侵入者いたのか。なんか恥ずかしい。

「ぬぅ……気配を消していたのに気づかれるとは。だが、見つかったところで任務は変わらん。フライヤ、貴殿に生きていられると困る者もいる。大人しくここで――ぐはっ！？」

とりあえず、長ゼリフっぽかったので殴った。敵みたいだし、いいよね？

「き、貴様、なにを……」

「こっちもあの子に用があるの。倒そうとするなら敵。あと、話が長くなりそうだったから」

「ちっ、舐めた真似を……お前、誰を敵に回してるか分かってるのか？」

「知らないわよ！ あなたが侵入してたせいで、こっちは“見つかった！”って観念したのに、別の人でしたーって判明して、気まずさマックスなの！ こんな空気ある？」

「そ、それは知らねえよ！」

「とにかく、私に倒されたくなければ、この場から消えて！」

「ったく、なんなんだよ……」

敵はぶつぶつ言いながら影に紛れて退散。

「ミズホ……」

エリーがちょっと引き気味だけど、邪魔者を追っ払えたからよし。はい次。

「さてと……」

「あなた、何者なの？」

「私？ 篠崎ミズホ。今は探検隊ギルド所属」

「あ、これはご丁寧に。アタシはフライヤ――フライヤ・アークライト。フライヤ隊の隊長を……って、そうじゃなくて！」

おお、ノリツッコミできるタイプ。嫌いじゃない。

「いや、あなた達、何しにここへ？ ていうか、侵入者でしょ！」

「まあね。でも私たちは“助けたい人”がいて来たの」

「助けたい人？」

「単刀直入にいくわ。ルアナが囚われてる牢屋はどこ？」

フライヤの目が見開かれる。

「え、ちょっと待って？ ルアナが囚われてるってどういうこと。あなた達、ルアナとはどういう関係なの？」

私は、森でモンスターと共闘したこと、ギルドの入り方を教えてもらったこと、そして――さっき、リーファに連行されていったことを、できるだけ簡潔に話した。

「あの女……そんなことまでしてたのね」

「フライヤは、ルアナと？」

「腐れ縁というか、幼馴染よ。アタシがホーリーライトに入ってからは会う機会が減ったけど……」

幼馴染。納得。さっきの刺客が最初に名指ししてたのも、フライヤだった。つまり、彼女の中にはリーファとは違う“基準”がある。さっきの反応からして、街の人を武器で制圧とか、本気で嫌ってる。――賭ける価値、ある。

「お願い。ルアナを助けるために、協力してほしい！」

フライヤは一瞬、視線を落としてから、まっすぐ私を見た。

「……でも、なんで私なの？」

「この街のホーリーライトは、やりたい放題。でも、あなたからは“自分の信じる正義”が伝わる。さっきの乱入者にも真っ先に狙われた。それって、あなたが中で浮いてる証拠でもあるけど――だからこそ、ここを変えられる人かもしれない」

言葉に嘘はない。強がりでもない。

けどフライヤは首を横に振る。

「アタシはホーリーライトの兵士。組織を裏切るわけには……」

うーん。まあ、そう来るよね。

こっちは外部、しかも侵入者。正論で押し切れる相手じゃない。なにか交渉の材料――彼女が“動ける理由”が必要だ。

（うーん……交渉の材料、ないものかな……）