第12話 ミズホと図書館の謎の真相

私とエリーは、夜の図書館にそっと足を踏み入れた。


昼間の騒ぎのせいで今は立ち入り禁止。だけど、私たちはそっと、誰にも見つからないようにこっそり侵入した。まるで秘密の探検みたいだけど、これは遊びじゃない。今夜こそ、全ての謎に決着をつける。


「ここ最近、多くの図書委員の人たちが体調を崩してるんだって。不自然なほど頻繁に……」


私の声は自然と低くなる。何かがここにある。そう確信していた。


「その話、私も聞いたわ。でも……もしかして、その原因って……」


エリーが私の目をじっと見つめる。


「確証はないけど、私は――闇の精霊の力が漏れ出してるんじゃないかと思ってるの」


図書館で急に聞こえたあの声。不自然な体調不良。すべてが一本の線でつながる気がした。根拠なんてない。でも、私は信じてる。この直感はきっと間違ってない。


私たちは昼間、サチちゃんたちが倒れた本棚の前に立った。


ただの棚。見た目は何もおかしくない。でも、空気が――重い。静かなはずなのに、どこかざわついてるような、そんな気配。


「ここよ。彼女たちが倒れたのは――」


「わかったわ。スザク!」


エリーがスザクを呼び出すと、あのお調子者の鳥が現れた。そして、しばらく辺りを見渡し、真剣な口調で言った。


「どうやらビンゴだね、エリン。ここには闇の精霊から発せられる力……かなり濃い波動を感じるよ」


やっぱり……!


私が平気だったのは、きっと闇の精霊と波長が合っていたから。逆に、他の図書委員たちは――耐えられなかったんだ。エリーが無事だったのは、きっと光の加護があるから。


でも……。


「分かったのはここまで、か」


ここまで来て、あと一歩が掴めない――そのもどかしさが胸を締めつけた。


――その時。


「驚いたわね……まさかここまで真相に近づくなんて」


「アマンダ先生!?」


エリーは驚いた様子で振り向く。でも、私は……なんとなく、気づいていた。


「先生、やっぱり偶然じゃなかったんですね。昼間、図書館にいたのは」


「ええ。図書委員の体調不良は、ずっと前から私の耳にも入っていたわ。でもあなたが、何度も図書館に通っていても平気だった。そこに違和感を覚えて……まさかここまで辿り着くとは思わなかったけれどね」


先生の声は、少しだけ誇らしげだった。


「まって、ちょっと待って!? 先生、闇の精霊のこと――知ってたんですか!?」


エリーが食いつくように問いかける。私も、胸の鼓動が高鳴るのを感じた。


「ええ、エリンさん。この学園には――かつて強大な“闇の精霊”が封印されたの。その事実は、私のような一部の者しか知らない」


やっぱり……この学園には、とてつもない秘密が隠されてる。


「……それじゃ、先生は何者なんですか?」


私の問いに、先生は微笑んだ。そして、少しだけ言いづらそうに口を開いた。


「それを説明する前に……あなたたちには、ある人に会ってもらう必要があるわ」


「ある人……?」


「この魔法学園の――“理事長”よ」


……えっ!? 理事長って……そんな、簡単に会える人じゃ――


胸の奥で、何かが動き出した気がした。


これまで探してきた答えが、ようやく見え始めている。


すべての謎が動き出す――そんな予感がしていた。

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