第13話 ミズホと学園の闇

急に「理事長に会ってくれ」って、ちょっと展開飛びすぎじゃない!?

私とエリーは、アマンダ先生に連れられて理事長室に向かっていた。


「そういえば、エリーは理事長に会ったことあるんだよね?」

「ええ、この学園に来た初日にご挨拶したわ。威厳がある…っていうか、近寄りがたいお爺様って印象だったわね」


…はい、終了ー。怖い人確定じゃん…。

私の中で、理事長=雷のような説教おじいちゃん像が完成した。


緊張で変な汗が出てくる中、ついに理事長室に到着。

アマンダ先生がノックすると、低く重厚な声が返ってくる。


「入りたまえ」


声からして、もう“威厳のかたまり”って感じ。

でも、いざ入ってみると――


そこにいたのは、意外にも優しそうな表情を浮かべた、スーツ姿のお爺さんだった。


「ほっほほ、そこまで緊張せんでもいいぞ、ミズホ君。ワシがこの学園の理事長、ルーサー・クルールじゃ」


――えっ!? 思ってたよりずっと柔らかい!?


「ど、どうも……」


動揺しつつ挨拶すると、理事長はにこやかに続けた。


「君の噂は聞いておるぞ。主席だけど問題児。なかなか面白い人物だそうじゃな」


ちょ、待って。私の評判、そんな感じで上まで届いてるの!?

もしかして、魔法薬で教室吹っ飛ばした件まで…!?


「お祖父様、そのあたりにしてあげてください。ミズホさん、ちょっと戸惑ってます」


「え、えええ!? お祖父様!?」


「ふふ、私、この理事長の孫なのよ」


――ま、マジで!? ちょっと待って、つまり私……

お偉い様の孫娘にあれこれ言ってたわけ!?

やっば……これは死んだ……


「その辺は置いておいて、本題に入りましょう」


いやいや、置いておいていいの!? …って思ったけど、もう突っ込む余裕もない。

私とエリーは、気持ちを切り替えて席についた。


「私たちが呼ばれた理由って…やっぱり、“あのこと”ですか?」


「うむ。君たちが“真相”に近づいたからこそ、こうして話をするのじゃ」


やっぱり、そうなんだ。

だったら、聞くしかない。覚悟を決めて口を開く。


「この学園に、闇の精霊がいるんですね?」


「その通り。この地には、太古の時代に封じられた“闇の精霊”が眠っておる」


「太古って……どれくらい前のことですか?」


「君たちが授業で学んだ“聖魔戦争”よりも、もっと昔じゃな」


――聖魔戦争より前!?

ただでさえ伝説レベルなのに、それ以上の話ってこと!?

話が急にスケールインフレーションしてるんだけど!


それに、どうしてこんな重大なことが今まで表に出なかったの?


「じゃあ、学園はその事実を隠してたってことですよね?」


もしこの事がホーリーライトの人たちに知られたら…それこそ学園どころか都市全体が混乱する。


「ミズホ君、君は“闇”についてどう教わっておる?」


「光と違って、闇は忌むべき存在って…ずっと、そう習ってきました」


それこそ、私の魔法薬の授業でミスした時よりも厳しい感じで。


でも、次の言葉が衝撃すぎた。


「この世界では、それが“常識”になっておるな。じゃが、ワシの知る“ホーリーライトの教え”は違う。

“光あるところに、闇もまたある”。互いに背中合わせの存在として教えられておったのじゃ」


……え? 今、すごく引っかかる言い方をしたよね。

“この世界では”って、どういう意味――?


「……実は、ワシとアマンダは、この世界とは“別の世界”から来た人間じゃ」


――は!?

ちょ、ちょっと待って!? 今度は異世界トークですか!?

急展開すぎて、私の思考がついていけないんですけど!??

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る