第11話 ミズホと謎の確信

「ねえ、シキ。本の整理で具合悪くなった話、もう少し詳しく教えてもらえる?」

私の胸の奥に浮かんでいた小さな疑念が、少しずつ形を持ちはじめていた。もし、あの時のシキの体調不良と、闇の精霊の声が関係しているとしたら――。


「な、なによ、急に……でも、確か、あの時は……」


「く、九段さん!大変です、サチさんが!」


突然、図書委員会の子が青ざめた顔で駆け寄ってきた。声も震えていて、ただ事ではないって、すぐに分かった。


私たちは慌ててその子の後を追った。そして――


「……えっ、サチちゃん!?」


床に倒れているのは、エリーを慕っていた後輩のサチちゃんだった。まさか彼女も図書委員だったなんて……。


「サチちゃん!しっかりして、サチちゃん!」


完全に気を失っている。これが、噂で聞いていた“体調不良”の正体……? こんな形で直面するなんて。


「み、ミズホ……」


後ろから聞こえたシキの声は、かすれていた。


「シキ!? ちょっと、大丈夫!? しっかりして!」


「分からない……けど、体が……なんか、変なの……」


見ると、周囲にいた他の図書委員たちも同じように苦しんでいる。顔色が悪く、立っていられないほどに。


これ……やっぱり、ただの偶然じゃない!


「今、私にできるのは――」


私は回復魔法の詠唱に入った。たとえ魔力量が少なくても、少しでも彼女たちの助けになりたい!


そのときだった。


「ミズホさん! 彼女たちを外に出して!」


「アマンダ先生!? どうしてここに……」


「話は後よ! 今はこの子たちの救出を最優先に!」


先生の声には、いつもの穏やかさとは違う緊迫感があった。私はうなずき、シキとサチちゃん、そして他の図書委員の子たちをアマンダ先生と一緒に運び出した。


外の空気を吸わせたことで、みんなの呼吸が少しずつ落ち着いてきた。よかった……命に別状はなさそう。


「先生、本当に助かりました……先生が来てくれなかったら……」


「ふふ、偶然よ。図書館に調べ物に来ただけ。でも……この状況、やっぱり……」


「先生……?」


「あっ、ごめんなさい。ちょっと、考え事してたの。ともかく無事でよかったわ」


やっぱり、先生も何か心当たりがあるみたい。そう思っていると――


「ミズホ!」


エリーが息を切らしながら走ってきた。私の顔を見るなり、思いきり抱きしめてきた。


「無事でよかった……本当に……!」


「うん、私も。ありがとう、エリー」


彼女の温かさが、心の中の不安を少し和らげてくれた。


でも、今はそれだけじゃ終われない。


「エリー、夜に図書館に来て。私、分かったかもしれないの」


「えっ……! 本当に……!?」


「うん。今度こそ、終わらせたい」


この魔法学校に存在している“闇の精霊”に、きちんと向き合わなきゃいけない時が来た。エリーと一緒に、この問題にケリをつけるんだ――!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る