第10話 ミズホとエリーの友情

この魔法学校に闇の精霊がいるなんて——

私たちの通う学園の裏側に、こんな秘密が隠れていたなんて思いもしなかった。


もしこの事実を《ホーリーライト》の人たちが知ったら、どうなるんだろう?

それこそ、都市全体を巻き込む大騒動になりかねない。


「私は、この学園、もしくはこの世界の歴史を調べてみようと思う」


エリーがそう言ってくれたとき、胸の奥がほんの少し軽くなった。

こんな大変なこと、一人じゃ抱えきれない。

エリーが一緒に考えてくれるだけで、どれだけ救われるか。


「うん、私は引き続き、闇の精霊の居場所のヒントになりそうなものを探してみるね」


「ミズホ、お互い気をつけましょう」


「うん……なんか、ごめんね。変なことに巻き込んじゃって」


「何言ってるの。友達でしょ?それに、私は全ての属性に意味があるって信じてる。その考えを証明するチャンスだと思ってるの」


——強いな、エリーは。

私も負けてられない。親友がここまで真剣に向き合ってくれてるんだ。私だって、ちゃんと応えたい。


「いや〜、美しい友情だねぇ。そうは思わないかい? 闇の精霊くんも」


(お、おう……そうだな……)


スザクのノリに、あの闇の精霊もちょっと引き気味。むしろそれが面白い。


「スザク、エリーのこと、ちゃんと守ってあげてよね」


「ふん、君に言われるまでもないさ。僕は君よりエリーに役立ってる自信があるからね」


……うっわ、相変わらず口が減らない鳥。

エリーの親友ポジション、いずれちゃんと決着つけてやる!


―――――――


そう意気込んだのは数日前。

だけど……その後、驚くほど何の進展もなかった。


今日も私は図書館。せっかく片付け終わったと思ったのに、テスト明けで大量の返却本が押し寄せて、またもやアマンダ先生から片付けの依頼。

まさか、こんなにすぐ戻ってくる羽目になるなんて。


「で、今度は何をやらかしたの?」


シキが呆れたような顔でこっちを見てくる。

……いや、その視線、やめてほしいなあ。


「私が悪いんじゃないもん!ちょっとエリーに悪い虫がついてたから、追い払っただけだよ」


「で、教室がドカーンってなるのね?」


「だって、魔法薬の教科書に載ってない配合、ちょっと試してみたかったんだもん。……結果はまあ、予想通り?」


「つまり、爆発はわざと?」


「ピンポーン!」


ポカッ。


シキに思いっきり頭を叩かれた。いったーい!


「反省しなさい!」


「次は、もう少し上手くやるから〜」


呆れ顔のシキ。信じてもらえてないな、これ。


「それよりさ、図書委員会、また減ってない?」


「そうね。今月だけで……五人目だったかしら」


「図書委員会がブラックって噂は聞くけど、ここまで辞めるの?」


「私も不思議に思ってる。まるで七不思議のひとつに加えたくなるくらい。ただ、辞めていく人たちのほとんどが体調不良を訴えるのよね」


体調不良……?


「シキは大丈夫なの?体調崩したりしてない?」


「一度だけね。たしか、本の整理をしてた時だったと思うけど」


本の整理で体調を崩すなんて、あるの……?

ただの疲れ、じゃない気がする。何かが、何かが起きてる——

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る