第2話 受付のお姉さんと瞬殺のダルマイン
騎士団本部の門をくぐると、石造りの広いエントランスが広がる。
壁には騎士団の
さらに歴代騎士団長の肖像画がずらりと並び、威圧感を放っていた。どれも険しい顔ばかりであり、何だか面白い。
誰も見ていないときにふざけて顔真似するのが、マイブームだったりする。
「さてと、隊長にお会いするとしますか」
近衛九番隊の
「モモちゃ〜ん、ちょっとそっち行くのスト〜ップ」
俺の名前を呼ぶ声に、足を止める。顔を向けると、カウンター越しにひらひらと手を振る女性がいた。
オニシャ・グリムワルト。鮮やかな赤髪を揺らす、受付係にして騎士団随一の
――いつも思うんが、この人、なんで俺にだけこんなに距離が近いんだ?
「……おはようございます、オニシャさん。今日は隊長に用があって――」
「そ・れ・が〜隊長さん、今朝になって急に王族の護衛に駆り出されちゃっててね。ほら最近、王都まわり物騒じゃない? 貴族やら王族やら、何件も暗殺が起きてるでしょ? 怖いわよねぇ〜」
たしかに最近になって、王都の空気がどこかきな臭くなってきた。騎士団の中でも警戒の空気が広がり始めている。
「あれ、隊長いないってことは、今日の任務は……」
仕事がないんじゃ何もできまい。今日は執務室でゆっくり過ごすのもいいかも。
オニシャさんが俺の考えを見透かしたかのように笑う。
「ふっふ〜、甘いわよモモちゃん。しっかり伝言、預かってるの」
オニシャさんが一枚の地図を俺に差し出す。淡い香水の匂いがふわっと漂った。
地図をみると、「本日中に出発せよ」と手書きが加えられていた。
「
無果のダンジョン――名前の通り、果てしなく無意味なダンジョン。まともな資源も採れず、出てくる魔物はスライムや弱小ゴブリンばかり。冒険者も地元の人も寄り付かない場所だったかな。いちおう
「任務の詳細は?」
「駐屯地にいる騎士に聞けってさ〜。ほんと困った隊長さんね」
……うちの隊長は、おおざっぱな性格だ。普段から細かい指示は期待していないが――それにしても今回は、あまりにざっくりしすぎている。
隊長は、オニシャさんにすら詳細を伝えていない。そこに妙な引っかかりを覚える。
まさか、騎士団内部での情報漏洩を警戒して? となると、これは極秘の任務ってことになる。
飛躍した思い込みかもしれないが、九番隊の本当の役割を考えるとあながち間違えではないかもしれない。
「ふぅん……まあいいや。分かりました。んじゃ、行ってきます」
「はいはい、明るいうちに帰ってくるのよ〜。変なもの買い食いしちゃダメよ〜」
受付嬢というより、もうお母さんじゃねえか。
✳ ✳ ✳
騎士団本部を出て、石畳の通りを歩き出した――その瞬間だった。
「オニシャ・グリムワルトと、なにコソコソ話してやがった!!!」
背後から怒声が飛ぶ。振り向くと、ダルマインとその取り巻きが剣を抜いて突っ込んできた。
目には明らかな殺意。反射的に通行人が声を上げ、道の端へと避けていく。
町中で斬りかかるとか正気か?
それに、なんで受付と話してただけでブチ切れてんだ?
俺は眉ひとつ動かさず、わずかに右手で空気を切る。
見た目にはなんてことないその動作が、魔法の起動だった。
「なっ……!?」
ダルマインが目を見開く。その動きが唐突に鈍くなる。続いて、その背後にいた取り巻きたちも、次々に動きを止め始めた。
「な、なんだこれ、息ができねぇ……!」
「モモ……てめぇ、まさか2つの魔法を!?」
「お前の魔法は身体強化のはずだろ?」
「一人一つ……のはずだ……魔法は……」
焦りと混乱が混じった声。動きは急速に鈍くなり、やがて
太っているから普通の人よりパワーがあるのだろうか? ダルマインだけが、何故かムダに長く抵抗していたが、最終的には口から泡を吹いて、気絶した。
「町中で剣を抜くなんて……ほんとバカだなお前ら」
俺はその場を動かず、ただ軽く息を吐く。
通行人たちのざわめきが遠巻きに響くなか、俺は足元の騎士たちをちらりと見下ろした。
いや、いくらダルマインでも、ここまでバカな真似をするとは思わない。……本当に、ただダルマインがバカなだけなのか?
何かが……おかしい。
一瞬、誰かに操られていたのではという考えが脳裏をよぎる。だが、よく見てもその
いったいどんな真相が――って、そんなわけないか。頭の悪いダルマインなら十分あり得ることだ! 俺が美人と話しててムカついたんだろう。
何かがこの王都で、静かに狂い始めている――そんな不穏な空気にまったく気がつかないまま、俺は無果のダンジョンへと向かうのである。
――――――――――――
物語がいよいよ動き始めました。
次回はいよいよ正ヒロイン登場回! お楽しみに~
フォローや☆☆☆、コメントをいただけると、とても励みになります。
カクヨムコンにも参加してますので応援お願いします!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます