【完結保証】騎士団の公安勤務~元社畜×モモ太郎🍑、俺だけ複数魔法のチート騎士だった結果、金目当てで公安入ったはずなのに、姫から熱烈アプローチされ、国家まで救うハメになったんですけどォォオオ!!~

ああああ

1章 残炎の契り

第1話 役立たず騎士。表向きには

「熱っ!」

舌が溶けるかと思った。

反射的にカップを置き、手で口元をパタパタする。


「ばあちゃん、コーヒー熱すぎるよ……!」

俺が声をかけると、台所で鍋をかき混ぜていたばあちゃんは、すずしい顔で言った。


「冷めたコーヒーなんて毒みたいなもんでしょ。朝は熱いくらいでちょうどいいのよ」


「毒はさすがに言い過ぎだろ……」


「でも、目ぇ覚めたでしょ?」


「うん、目は覚めた。ついでにいらん記憶も」


 まさか、コーヒーが熱くて前世を思い出すなんて。

なんだこのギャグみたいな展開は!


 それは、俺にとっての前世の記憶だった。

熱さの衝撃とともに、もう一つの人生が蘇ってくる。

満員電車、残業、書類の山、終電、交通事故――日本。どこにでもいる、ただの社畜。生きて、働いて、倒れて、終わった人生だ。


 皿のパンをかじりながら、ぼんやりと前世に想いをせる。


「なんだいぼんやりして。コーヒーおかわりするかい? さらに熱々だよ!」

ばあちゃんが声をかけてくる。


「いやいいよ! 美味しかったけども」

この調子でコーヒー飲んだら、100個くらい前世、思いだしちゃうよ。


 ばあちゃんは、先の戦争で孤児になった俺をひきとって育ててくれた、血のつながらない家族。

この王都にある小さな一軒家で、俺は十数年ばあちゃんと暮らしてきた。


 実は、俺の所属する近衛このえ騎士団には、寮がある。でも、引っ越さずこの家に住んでいる。

控えめに言って、ばあちゃんは大好きだし、血の繋がりはなくても肉親同然に思ってる。

まぁ、本人には言わないけど。


「今日は騎士団本部?」


「うん。なんか、新しい任務だってさ」


「あらあら、新しい仕事なら、いつもより気をつけて。お昼はちゃんと食べるのよ?  王都の外にでるなら、明るいうちに帰ってきなさい。暗くなるとゴブリンが出やすいから」


「騎士がゴブリンにビビってどうするのよ……」


「あんたはちょっとドジだからねぇ。心配なのよ」


「わかったよ。なるべく早く帰ってくる」


 食事を終え、玄関を出る。

騎士だけど剣は持たない。あの魔法が使える俺にはだから。

 


✳ ✳ ✳


 玄関の扉を閉めて歩き出す。目的地は騎士団本部。

朝の空気はちょっと肌寒くて、眠気が残る。


「まあ……たくさんかせいで、ばあちゃんに楽させてやるためにも、頑張るしかないな」

そうつぶやいて、足を速める。


 舗装ほそうの甘い石畳を歩き出す。と、通りの先から騒がしい声が飛んできた。


「お〜いお〜い、そこの近衛九番隊さ〜ん!」


 うんざりするくらい通る声。まるまると太った図体に、脂ぎった笑み。騎士団の同期、ダルマインだ。

お決まりの取り巻き四人も健在。


「雑用の九番隊さんよぉ、どこ行くんだ? 雑用をおおせせつかったかぁ?」


「朝からご苦労様、近衛三番隊の皆さん」

俺は立ち止まらず、軽く手を挙げる。


「おっ? なんだその余裕の態度は? 今日はどんな雑用だ?」


「さあな。本部に任務を聞きに行くとこだ」


「はっ、九番の任務? どうせ裏手のゴミ捨て場の掃除でも頼まれるんだろ」


「あれ? それ、お前が前にやってたやつじゃなかったっけ?」


「ぐっ……ち、違ぇよ! あれは訓練の一環だ!」


 俺のを使えばダルマインなんて瞬殺なんだけど――まぁいい、倒しても報酬になるわけじゃないし。と、俺はすいすい歩く。

ダルマインなんかにかまうだけ時間のムダだ。


「まあまあダルマインさん、相手は甲冑かっちゅうも着れない事務要員部隊、見て下さい、冒険者の格好してますよ?」

「そうそう、一度入ったら定年まで出られない島流し部屋てんですからね。まともな態度じゃないのも当然って話で」


 俺に軽くあしらわれて、怒鳴ってるダルマインを周囲がなだめる声が聞こえてくる。

振り返らずに右手をひらひらと振って応えておいた。歩みは止めない。


 近衛騎士団内で九番隊が「落ちこぼれ部署」なのは事実。

には、だが。


 通りの喧騒けんそうにまぎれて、ダルマインの声も遠ざかる。


「そうだ! 帰りにばあちゃんに、なんか買ってってやろう。甘いもの? そういえば流行ってるものがあったな」

「……いや、ばあちゃん、食べてくれるかな。新しい食べものは、すぐ毒とか言うしなぁ」

そんなことを考えていると、もう騎士団本部の門が見えていた。


――――――――――

 読んでいただきありがとうございます。

第2話「受付のお姉さんと瞬殺のダルマイン」本日中に投稿いたします。

瞬殺されるダルマインをお楽しみに!


 第一部完結10万文字、書き溜め済みですので、エタらず毎日投稿していきます~。

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