第3話 乱暴
翌日、ルカのいる病室に入るとルカは外を見つめていた。
文乃 「ルカ、おはよう」
ルカ 「おはようございます」
文乃が笑顔で挨拶するとルカも笑顔で挨拶を返した。
文乃 「さっき、退院の手続きしてきたから帰る支度しなさい」
ルカ 「はい」
数分間で支度をしていると文乃がプレゼント箱を見つける。
文乃 「あら、このプレゼント箱は?」
ルカ 「わかりません。目が覚めたら箱があったんです」
文乃がメッセージカードに目をやると『ルカへ』と書かれ裏を見てみると何も書かれていなかった。ルカに中を見ていいか聞いて中身を見ると黒と紫色をしてかっこいい服を着たクマのぬいぐるみだった。
支度を終え、ルカと文乃は車に乗り双葉孤児院へ帰る。
文乃 「着いたわ。ここが双葉孤児院よ」
ルカ 「ここが……」
文乃 「それじゃあ中に入ろうか」
ドアの鍵を開けると子供達がわいわいと楽しく遊んでる様子が見えた。
文乃 「それじゃあ、ルカの部屋を案内するから、着いてきて」
ルカ 「はい」
案内された部屋に入ると家具がほとんどなく殺風景な部屋だった。
文乃 「ここがあなたの部屋よ。ゆっくりしてね」
ルカ 「ありがとうございます」
文乃 「お昼はまだよね?おにぎり持ってくるから待ってなさい」
ルカ 「はい」
おにぎりを、持ってくる間、ルカは部屋を見渡した。
自分が住んでた場所、自分が使っていた部屋。分からないのに、見覚えもないのになんとなく落ち着く。
ふと、勉強机を見るとそこには自分と自分よりも小さい女の子と男の子の写真があった。女の子は満面な笑みを見せ両手でピースをしていたが男の子は照れたように顔を少し横に向けた状態で写っていた。そして、自分を見ると自分は真顔で正面を見つめていた。
ルカ 「この2人は誰だろう……」
とても懐かしい……。
写真を持ちベットに座り2人のことを考えていると部屋のドアが開きだし美咲と樹里、あかりの3人が入ってきた。
美咲 「あら、なーんだルカ生きてたんだ。一ヶ月も帰ってこないから死んだのかと心配してたのよ?無事でとても良かったわ」
樹里 「そうよ、私もあなたが無事で良かったわ。だって、私達は友達だもんね」
3人はルカに対し心配しているように見せながらもルカのことを心の底から嘲笑うかの如く笑みを浮かべている。
あかり 「それな!死んでしまったら遊び相手がいなくなるもんね」
3人でヘラヘラと笑うがルカは表情を変えず平然とした姿で話し出す。
見覚えもない人……。でも、見るからに私の事嫌ってる。
ルカ 「あんたら、誰?」
あかり 「は?何意味わかんないこと言ってんの?」
あかりは突然ルカが不思議な事を言い出したことで何こいつと言わんばかりの顔を見せながら喋ると、樹里がルカを嘲笑いながら話し出す。
樹里 「知らないの?昨日聞いたんだけどこいつ記憶喪失らしいよ」
美咲 「へぇ、あんた記憶喪失なんだ」
美咲もルカが記憶喪失になっていたことを知らなかったのか、少しニヤッと笑いながら話す。
ルカ 「……」
美咲 「私たちの名前知りたい?でも、教えてあげない」
あかり 「あんたに教える名前はないってね」
あかりの言った言葉にみんなが静まり返る。美咲はそこしため息をつくとあかりは『ごめん』と1度謝る。
美咲 「とにかく理由がなんであろうとあんたには教えてあげない」
ルカ 「別にあなた達が教えてくれなくても文乃さんに聞けば簡単にわかるんで別に教えてくれなくても構いませんよ」
ルカは三人に笑顔で答えると美咲は顔を赤くしていた。
美咲 「ルカ、あんたは記憶が失ってもその生意気な性格は変わらないのね」
ルカ 「あなた達も惨めなことして楽しいのかしら」
美咲 「あんたねぇ」
美咲がルカを思いっきり押しルカは尻もちを着いてしまう。
美咲 「余り調子乗ったこと言ってんじゃないわよ」
美咲はルカに近づき髪を引っ張ると『痛い!』とルカは言う。
あかり 「いいぞ〜、もっとやっちゃえ」
あかりはルカをいじめてる様子を笑いながら見てると同時に樹里がドアの方から廊下を見て声上げた。
樹里 「美咲やばいよ、文乃がくる」
あかり 「あいつに見つかるとうるさいから早く行こ」
美咲 「こんなんで済むと思うなよ、次はもっと痛めつけてやる」
美咲はルカに近づき鋭い目つきで言った。そして、部屋を出て行った数秒後に文乃が入ってきてルカに質問してきた。
文乃 「さっき、美咲達が貴方の部屋から出てきたけど、もしかして何か……ってどうしたの?!」
文乃はルカの方に目をやると驚いていた。ルカは立ち上がり乱れた髪を直しながら先ほど、美咲達に何を言われたかや何をされたかを洗いざらい話す。
文乃 「そう、そんなことがあったのね、とりあえず安心してそのこは私が厳しく言っておくから、ルカはご飯を食べて少し休みなさい」
文乃はそう言い部屋を出た。ルカは机に置かれた1つの小さいおにぎりを食べお腹いっぱいになりベットで横になる。そして、いつの間にか眠ってしまった。
夢を見た。
〈夢の中〉
森の中へルカが入り年老いた老人がルカの左腹部に目掛けて猛毒のナイフを刺して笑う。
突然場面が変わりルカを刺した老人は顔を青ざめながら逃げ、辺りは突然木や草が枯れていき、突然老人の身体はサラサラと砂のように消えていき、ルカは倒れた。
数時間寝た後ルカは目を覚まし、目からは涙を流していた。
今の夢は何?とっても生々しい夢……。
すると、頭がズキッと痛みだし、ルカは頭に手を押え目を瞑った。しばらくすると部屋のドアが開き、文乃が入ってくる。
文乃 「おはよう、これから夕食だから食堂に行くわよ。案内するから着いてきて」
ルカ 「はい」
ルカは大人しく文乃の跡をついていくと食堂につきご飯の貰い方やどこで食べればいいかなどを教わった後に、文乃と別れルカは会いてる席に座ってご飯を食べ出す。すると、昼間に現れた美咲達がルカの机の前に立ち尽くした。
美咲 「ルカ、あんた記憶喪失なのよね?私がご飯を食べるのを手伝ってあげる」
あかり 「美咲、優しい」
三人はルカを見つめニヤニヤ笑う。
鬱陶しい……。
ルカ 「手伝わなくても食べられるので大丈夫です」
美咲 「この私が助けてあげるって言ってるのに断んの?」
美咲はルカの言葉にカチンと来たのか少し顔をしかめる。
ルカ 「私はそれを余計なお世話って言ってんの」
美咲 「はぁ?いいから貸してみなさいよ!」
ルカ 「あ、ちょっと……」
ルカがお味噌汁を食べてると美咲が手を出し味噌汁を引っ張る。その反動で味噌汁は美咲の服にかかってしまった。
樹里 「嘘……」
あかり 「やば……」
樹里とあかりは、美咲の服に味噌汁がかかってしまったことに顔を少し顔を青ざめていた。
美咲 「……」
みんなは、ルカと美咲達の騒ぎにザワザワとしたり、おどおどした雰囲気に包まれた。
ルカ 「あんたが引っ張ってこなかったらこんなことにならなかったのよ」
美咲 「……。ふざけるんじゃないわよ!これは私のお気に入りん服なのよ!それをあんたがさっさと渡せばよかったのにさっさと渡さないからこうなったんじゃない責任取れよ!」
美咲はそう言いルカの髪の毛を掴んだ。
ルカ 「痛い!」
美咲 「あんたこれ弁償しなさいよ!」
ルカの髪を掴み思いっり美咲はルカに叩こうとしたが突如女の子がルカの前に「やめて!」と言い両手を広げ美咲が叩こうとするのを止めた。
美咲 「梓、私を止めるき?」
この子……写真に乗ってた女の子?
ルカの前に立っていたのは写真に載っていた 1人の女の子だった。
梓 「今さっき、アヤトお兄ちゃんがこのことを伝えに行ってるから文乃先生がもう少しで来るよ」
あかり 「はぁ?!梓、あんた余計なことしやがって!」
美咲 「梓、私の大切な服を汚したのはこの女なのにこの女の味方になるの?」
あかりが梓に手を出そうとしてたのを咄嗟に腕を掴んで止めた。
あかり 「ルカ、テメェ」
ルカ 「これは、私とあなた達の問題よね?この子は何も関係ない」
樹里 「あんたは前からうざいんだよ!もうここからでてけよ!」
小さい子供達は皆オドオドし、泣いてる子供も何人かいた中、ルカの事を嫌ってた人達が樹里に合わせて「出ていけ!」何度もいい続けた。梓は何度も『やめて!』と言っても止まることはなくずっと続いていた。
ここには私の居場所はどこにもないのかな……?
ルカが梓の肩にポンッと手を置くと梓が心配そうにルカを見つめた。そして。ルカは状況に耐えられなくなり「ごめん」と言い残しその場を走り去ろうとすると食堂の入口には文乃ともう1人写真に写っていた男の子が立っていた。急いできたのか少し息を荒らげていたが、ルカはそれを気にせず走り出すと、『ルカ!』と叫ぶ文乃の声と『ルカ姉!』と叫ぶ男の子の声がした。それから、10分くらいだろうかルカは闇雲に走り、道に迷ってしまった。息を切らしながからヨロヨロと歩くと近くの男性にぶつかってしまった。
男性 「おい!」
ルカ 「すいません……」
ルカは軽く頭を下げすぐさま走る。
ルカ 「私の居場所はここにはない……」
どうらって、前の私はこの状況を乗り越えてきたのかな?苦しいよ……。
その後もずっと走り続けたがすぐに疲れてしまった。ルカは土手に腰をかけ蹲りながら泣いてると「キュイキュイ」と不思議な声が聞こえた。ルカは顔を上げて声のする方を見ると草むらに10㎝ほどの黄色に光る毛玉がいた。
ルカ 「毛玉?」
毛玉 「キュイキュイ」
私は色んな世界でどう生きる Neru @Neru0918
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