第2話
「が、ガラテア。今の……?」
「ご主人様、『人形情報』と叫んでいただけますか?」
「に、人形情報!」
すると、その瞬間、ガラテアの情報が表示され始めた。
【ガラテア】
種類:人間型人形
スキル:短剣術、暗器投擲術
レベル:14
HP:36
MP:42
力:24
敏捷:32
知力:22
精神:35
幸運:10
俺は驚愕した。
ガラテアのレベルが、とんでもなく高かったからだ。
レベル14と言えば、いきなり14階層に行っても通用するほどの水準だ。
1階層ごときが相手になるはずもないのは、当然のことだった。
「ガラテア、どうしてこんなに強いんだ?」
「すべてご主人様のおかげですわ! 人形師の初期能力値は、どれだけ精巧に作られた人形かによって決まるんですの。そしてわたくしは、ほぼ最高級に近い初期ステータスをいただいたのですわ! ご主人様の人形製作スキルが最高だという証ですわ」
「ほう……」
ガラテアが最高の傑作であるという事実を、ダンジョンにも認められたというわけか。俺は誇らしい気持ちでいっぱいになった。
「ガラテア、やはりお前は俺の人生で最高のドールだよ」
「ご主人様も、わたくしにとっては神様のような存在ですわ!」
「神? 俺が?」
「わたくしの創造主ですもの。それに、こんなにもわたくしを愛してくださって……わたくしにとっては信仰の対象なのですわ」
「そうか?」
俺は照れくさかったが、ガラテアの頭を撫でた。次の瞬間、ガラテアが俺に抱きついてきた。
「愛してるよ、俺のガラテア」
「わたくしも同じですわ。ご主人様」
ガラテアを胸に抱き、頭を撫でる。二人の抱擁はしばらく続いた。ガラテアの温もりが胸を満たした。これが魔石を燃焼させて発生する熱だということは分かっていた。だが俺にとっては、ガラテアの温もりそのものに感じられた。ガラテアの温もりを感じられるというだけで、ダンジョンに来た甲斐があったというものだ。
「よし、ガラテア。そろそろ本格的に魔石を集めるとしようか。お前が動き続けるには魔石が必要だからな」
俺の言葉に、ガラテアはぱあっと顔を輝かせて頷いた。
「はい、ご主人様! わたくしがご主人様のため、そしてわたくし自身のために、たくさん集めてまいりますわ!」
彼女はやる気に満ち溢れ、ぎゅっと拳を握ってみせた。その姿があまりにも愛らしくて、俺は思わず頬を緩めた。
二人は再び1階層の通路を歩き始めた。ほどなくして、また別のスライムの群れが現れた。今度は五、六匹といったところか。
「ご主人様、今回もわたくしが……」
「もちろんだ。存分に腕を振るうといい」
太郎が許可するやいなや、ガラテアは前に出た。彼女の両手にはいつの間にか漆黒の短剣が一対握られていた。まるで彼女の影から抜き放たれたかのように、あるいは彼女の意思に応じて虚空から具現したかのように自然だった。
ガラテアの動きは以前にも増して流麗だった。彼女はスライムたちの間を舞うように駆け抜ける。短剣は稲妻のように閃き、スライムたちの核を正確に貫いた。
パリン!
スライムが弾け飛び、小さな魔石の欠片が床に散らばった。青みがかった魔石は、薄暗いダンジョンの中で玲瓏と輝いた。
「すごいな、ガラテア! 本当に瞬く間だったぞ」
太郎は感嘆しながら魔石を拾い集めた。ガラテアは称賛の言葉に頬をわずかに赤らめ、はにかむように微笑んだ。
「ご主人様の作品ですもの。これくらいは当然ですわ」
そうは言うものの、太郎の称賛が心地良いのか、口元がかすかに綻んでいた。
かくして俺たちは1階層をあっという間に踏破した。ガラテアの圧倒的な戦闘力のおかげで、1階層のモンスターたちは俺たちにとって何の脅威にもならなかった。俺はガラテアが魔石を収集する間、周囲を警戒したり、スライムが多すぎる場合には俺の『実戦術』スキルで敵を集める程度の役割だった。
しかし、俺はまったく退屈ではなかった。自分の傑作が生き生きと動き、目覚ましい活躍を繰り広げる姿を見ているだけで、胸が熱くなるような喜悦を感じていたからだ。
そうして、1階層を越えて2階層へと到達した。2階層のモンスターはゴブリンたちだ。しかし、ゴブリンも同様に苦戦する相手ではなかった。何しろガラテアのレベルは14なのだから、2階層が相手になるはずもなかったのだ。
ガラテアが苦戦を強いられるとしたら、少なくとも11階層からだろう。それゆえに2階層も軽々と踏破し、3階層、4階層を越えて、さらに下層へと進んでいった。
そうして5階層に到着した時、初めての出来事が起こった。
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