第十六章:~隣国での再会~

隣国に到着した王とリリアンは、盛大な歓迎を受けました。


王子アレクサンダーの横に立つ白雪姫の目には涙が浮かんでいました。


「お父様、お母様・・・長らく留守にしてごめんなさい」


少し見ない間に、更に美しさを増した白雪姫を、王はしっかりと抱きしめました。


「良かった…本当に良かった。姫が元気でいてくれた。」


王の目にも涙を浮かんでいました。


「父上…私は元気です。

 アレクサンダー王子と、この国の皆様に命を救われました。」


白雪姫は王の胸の中で安らかな笑顔を浮かべました。


一方、リリアンは

「ほ、本当に良かった事・・・」

と、引きつった笑顔を浮かべながら、二人を見つめていました。






~裁きの場~


婚約の祝宴が始まりました。


リリアンが猛毒の櫛を持ち、


「姫の婚約のお祝いに、私が作った、この美しい櫛を姫に飾ってあげましょう」


と、姫の側に歩み寄ろうとすると、王エドワードは


「待て」


とリリアンの腕をつかみ、突然こう宣言しました。


「この喜ばしい婚約を祝うため、王妃リリアンに、舞を披露してもらおう。」


驚いたリリアンは、

「王、私は姫に、私が作った、この美しい櫛をお祝いとして差し上げたいのです。」

と言いました。


王は

「では、その櫛は私が預かろう」

と、リリアンから櫛を取り上げると、櫛を水の入ったグラスに入れました。


グラスの水はみるみるうちにどす黒く濁ってしまいました。


「これは…一体なんだ?リリアン、何故、櫛を入れた水がこんなにも濁るのだ?」


リリアンは蒼白し、何も答えられません。


「やはり、リリアンには舞を披露してもらおう。特別な靴を履いてな」


と、王が告げると、

兵士たちが準備していた、真っ赤に焼けた鉄の靴が運ばれてきました。


リリアンは目を見開き、叫びました。


「これは…何?どうゆう事ですか!?」


王は冷たい声で言いました。


「これがお前への裁きだ。お前は何度も白雪姫を殺そうとした。

 狩人からもこびとたちからも話を聞いた。

 この櫛に塗ってあったのも毒なのだろう?」


リリアンは震えながら後ずさりしながら、何とかこの場を逃れようと

「違いますわ!わたくしは…そんなこと…!」

と言いました。


しかし、王はリリアンを鋭く睨みつけました。


「お前が犯した罪はすべて明らかになった。もう言い逃れはできない。」







~最後の舞~


兵士たちがリリアンを取り押さえ、無理やり焼けた鉄の靴を履かせようとすると、彼女は叫び声を上げました。


「私は世界一美しくありたかったのよ!」


「姫よりも私の方が美しいと言ってほしかった!」


「姫よりも私の方が愛されるのに相応しいのよ!」


「王!私はただ愛されたかっただけなのです!!!」


彼女の叫びに、全員がその場に立ち尽くしました。


ですが、兵士たちだけは動きを止めず、

リリアンを押さえつけ、リリアンの足に焼けた鉄の靴を履かせました。



無理やり焼けた鉄の靴を履かされたリリアンは、

叫びながら狂ったように動き始めました。


それは「狂気の舞」との名が相応しい物でした。


激しい痛みに苦しみながら、彼女は絶叫し続けました。


「美しいと言って!私を愛して!誰か!お願い!」


その姿を見ていた白雪姫は、

耐えきれず、涙を流し、王・エドワードにすがりつきました。


「どうして…どうしてこんなことに…。」


リリアンは次第に力尽き、倒れこみました。


彼女の最後の言葉は、小さな声で呟かれたものでした。


「私は…ただ…愛されたかった…。」




続く~第十七章(最終章)へ~






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