第十二章:~冷たい笑顔~

リリアンは、毒リンゴを白雪姫に渡した後、

何事もなかったかのように城へ戻りました。


城内では、依然として姫を探す騒ぎが続いていましたが、

その熱意は次第に薄れ、

兵士たちや侍女たちの顔には絶望と疲労の色が滲んでいました。


「姫はどこにもいない…。もう手遅れかもしれない。」

そんな囁きが城中で聞かれるようになり、沈んだ空気が漂っていました。




~嘆き悲しむ王と人々~


王エドワードは玉座に座り、頭を抱えていました。

その姿には威厳も光もなく、愛しい娘を失った父親の悲嘆が漂うだけでした。


「白雪姫…お前がいなくなってから、城には何の喜びもない…。」


その様子を見ていたリリアンは、人々に声を掛けて回り始めました。


「皆さん、姫のことは心配だけれど、どうしようもないわ。さぁ、元気を出して。」


リリアンの言葉は以前の彼女を彷彿とさせるような、優しく聞こえるものでした。

ですが、その微笑む目には冷たさと狂気が感じられ、

人々の心に不安をもたらしていました。





~王の疑念~


王はリリアンの振る舞いに違和感を覚え、リリアンに問いただしました。

「リリアン…なぜお前はそんなに元気でいられるのだ?

 娘がいなくなったというのに、どうしてお前は笑っていられる?」

王の声には困惑と戸惑いが混じっていました。


リリアンはその問いに柔らかな笑顔を浮かべながら答えました。

「私は、王と皆の太陽なのですよ。

 私が元気でいれば、皆も姫が居た頃より、心が安らぐでしょう?」


その言葉を口にしたリリアンの顔は、

かつて王が愛した慈愛に満ちたものと似てはいましたが、

全く異質で邪悪な物に見えました。


「太陽…だと?」


王はリリアンの言葉を繰り返しながら、背筋が凍るような恐怖を感じていました。


「リリアン…お前はいったいどうしてしまったのだ?」


王の問いに、リリアンは何も答えず、

冷酷な笑顔を浮かべたまま、その場を立ち去りました。


リリアンの立ち去る後ろ姿を見ながら、

王はその場に崩れるように座り込みました。


「あの笑顔は…本当にリリアンのものなのか?」


城内の人々もまた、リリアンの変化に気づき始めていました。


かつて、人々を癒していた彼女の声や言葉でしたが、

今は、冷たく鋭い狂気が込められているように感じられていたのです。



続く~第十三章へ~





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