第十一章:~毒リンゴ~
リリアンは、自室に籠り、邪悪な考えを巡らせていました。
これまでの計画が、すべて失敗に終わった理由を思い返しながら、
リリアンは自分の心に湧き上がる声に耳を傾けていました。
「次の計画は、あの子が絶対に生き返らない方法でなくてはならない。」
彼女の視線が、机の上に置かれた赤いリンゴに止まります。
その瞬間、恐ろしく残酷なひらめきが彼女の中に宿りました。
「毒よ…これしかないわ。」
~毒リンゴの製作~
リリアンは城の奥深くにある秘密の部屋へと向かいました。
その部屋には、彼女がかつて学んだ、薬草学の道具が置かれていました。
彼女は慎重に毒草や粉末を混ぜ合わせ、
見るからに美しい赤いリンゴにそれを染み込ませました。
「完璧だわ。見た目は甘くて美味しそうなリンゴ。
でも、一口かじれば…終わりよ。」
彼女は出来上がった毒リンゴを手に取り、冷たい笑みを浮かべました。
~リンゴ売りの老婆への仮装~
リリアンは再び変装に取り掛かりました。
今回の姿は、優しげで善良そうなリンゴ売りの老婆。
顔には皺を刻み、粗末な服と頭巾を身に纏った彼女は、
見た目から疑いを持たれないよう、徹底して変装しました。
「これなら、あの無垢な白雪姫は疑うことはないでしょう。」
籠に数個の赤いリンゴを入れ、毒を仕込んだリンゴを目立つように配置すると、
リリアンは再び森の奥のこびとの家へ向かいました。
こびとたちが仕事へ出かけた後、
リリアンは小さな家の前に立ち、静かに扉を叩き声色を変えて、声をかけました。
「こんにちは、お嬢さん。美味しいリンゴを売りに来ましたよ。」
家の中から、白雪姫の愛らしい声が響きました。
「まあ、おいしそうなリンゴですこと。」
扉を開けた白雪姫は、籠の中の素晴らしく赤いリンゴを見て目を輝かせました。
「お嬢さん、このリンゴをひとかじりしてみませんか?
甘くて、とても美味しいですよ。」
人を疑うことを知らない白雪姫は、
リリアンの差し出したリンゴを手に取りました。
~毒リンゴの効果~
「本当に美味しそう…。」
白雪姫はリンゴを一口かじりました。
次の瞬間、白雪姫の顔は青ざめ、体はぐらりと揺れました。
「どうしました?大丈夫ですか?」
と、リリアンは心配を装いましたが、その目には冷酷な光が宿っていました。
白雪姫は苦しそうに手を伸ばし、
そのまま地面に崩れ落ち、動かなくなってしまいました。
~狂気の勝利宣言~
「やったわ!こんどこそ、終わりよ!これで世界一美しいのは私よ!」
リリアンは勝ち誇ったように高らかに笑い、こびとの家を後にしました。
「王にも人々にも愛されるのは、この私でなくてはならないのよ!」
彼女の言葉は森の中に響き渡り、冷たい風がその声を運んでいきました。
その背中には、かつての美しい王妃の面影は一かけらも残っていませんでした。
続く~第十二章へ~
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