第十三章:~揺らぐ自信と新たな怒り~

目の前で倒れこみ動かなくなった白雪姫を見たリリアンは、

自分が「世界で一番美しい」と信じ、疑う事はありませんでした。


そのため、彼女は、魔法の鏡に再び問いかける必要もありませんでした。


「すべて終わったのよ。もう鏡の言葉を確認するまでもないわ。」


自室に籠る日々を終え、リリアンは美しいドレスを身にまとい、

かつてのように堂々と宮中を歩き回るようになりました。


「私の美しい姿を見ることで、王も皆も心が癒されるはずよ。」


彼女はそう信じ、優雅な笑顔を浮かべながら、

兵士や侍女たちに微笑みかけていました。





~暗くなる城内~


リリアンの変化は城内の人々を困惑させ、

次第に不快なものとして受け取られるようになって行きました。


「白雪姫様がいなくなったというのに、

 どうして王妃様はあんなに楽しそうにしていられるのだ?」


「悲しむどころか、まるで嬉しそうに見えるわ。」


城内の人々の間で、リリアンの振る舞いに、ささやき声が広がっていました。


王もまた、リリアンと距離を取るようになり、

彼女に目を向けることすら無くなっていきました。


「姫がいなくなってから、王妃は変わってしまった…。」


日々、明るく振る舞うリリアンとは反対に、

城内の空気は暗く、冷たく沈んで行くばかりでした。






~魔法の鏡に問う~


リリアンは、王や城内の人々の態度の変化を感じ始めていました。


「私の美しさだけでは、王や皆を癒せないのかしら?」


胸の中で不安が膨らみ、再び魔法の鏡を手に取りました。

しばらく触れていなかったその冷たい表面は、どこか不安をかき立てるようでした。


大きく息を吸った後、リリアンはゆっくりと問いかけました。


「世界で一番美しいのは誰?」


鏡はいつものように揺らぎ、静かに答えました。


「白雪姫。それは白雪姫。」


その答えを聞いた瞬間、リリアンは驚愕し、

全身から、血の気が引いていくのを感じました。


「白雪姫…あの子は生きているの!?」


目を見開き、震える声で鏡に問いかけました。


「どこで生きているの!?」


鏡は再び答えます。


「隣国。姫は隣国で生きている。」







~絶叫するリリアン~


リリアンは青ざめ、鏡を握りしめ、崩れるように床に膝をつきました。


「なぜなの…なぜ、まだあの子が生きているの!?」


やがて、リリアンは力なく座り込んだまま、絶叫しました。


「何故なの――!!!!!」


その声は城の廊下にまで響き渡り、

聞いた人々の心に、不気味な恐怖を植え付けました。




続く~第十四章へ~





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