第十章:~再び募る憎悪~


リリアンは急ぎ足で城へと戻りました。


マントを脱ぎ捨て、普段の装いを整えながら、平常を装いました。


城の中は、まだ姫を探す騒ぎで溢れていました。


「姫が見つかりません!」

「どこかに隠れているのかもしれない。もう一度、全員で探し直せ!」


兵士や侍女たちは王の命令に従い、必死で捜索を続けていました。


その様子を見て、リリアンはニヤリと冷たく笑いながら、心の中で呟きました。

「見つかるはずがないわ。あの子はもう…。」





~王の傷心~


王・エドワードは、大広間で椅子に深く座り込み、頭を抱えていました。


その顔には疲労と絶望が色濃く刻まれていました。


リリアンはそっと近づき、優しげな声を掛けました。

「エドワード王、大丈夫ですか?」


しかし、王はリリアンの声には応えず、ただ呆然と呟き続けていました。

「ああ…私の姫はどこに行ってしまったのか…。白雪姫、どこに居るんだ…。」


その言葉を聞いたリリアンは、

氷のように冷たい目で王を見下ろしながら思いました。


「姫はもう居ない。

 数日もすれば、王もまた、私に関心を持ってくれるようになるわ」





~鏡との対話~


自室へ戻ったリリアンは、すぐに魔法の鏡を手に取りました。


鏡の冷たい感触は、興奮で震えるリリアンの手を静かに包み込みました。


「世界で一番美しいのは誰?」


リリアンは、鏡が自身の名を告げる声を待ち焦がれ、喜びに満ちていました。


鏡の表面が揺らぎ、いつもの静かな声が響きます。


「白雪姫。それは白雪姫。」


その答えを聞いた瞬間、リリアンの中に残っていた、わずかな理性が吹き飛び、

憎悪と悔しさだけが溢れました。


「何故なの!?まだ、あの子だというの!?

 どうして…どうして私ではないの!」


リリアンは鏡を机に叩きつけるように置き、拳を固く握りしめました。





~新たな決意~


「次こそは…絶対に亡き者にしてやる!」


リリアンの声は低く氷のように冷たいものでした。


彼女の目には、もはや良心の影はなく、嫉妬と憎悪だけが光っていました。

鏡の表面に映る彼女の顔には、かつての慈愛に満ちた美しさはなく、

狂気に満ちた表情へと変わりつつありました。


「世界で一番美しいのは私でなくてならない。

 あの子が居なくなるまで、終わらない…」


リリアンは深く息をつき、冷静さを装うと、

次の計画を練るために考えを巡らせました。




続く~第十一章へ~



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る