第八章:~再び鏡に問う



王妃リリアンは、料理人に作らせた肉料理を見つめ続けていました。


フォークを手に持ちながらも、口に運ぶ手は途中で止まり、

彼女の視線はどこか遠くを見ていました。


料理を半分以上残したまま、リリアンは静かに席を立ち、自室へ戻りました。


部屋に戻ったリリアンは、椅子に腰を下ろし、

しばらくの間、何も考えられずにぼうっとしていました。


リリアンの心の中には、

後悔と怒り、嫉妬が入り混じり、言葉にならない感情が渦巻いていました。


やがて、リリアンはゆっくりと立ち上がり、

机の上に置かれた魔法の鏡に手を伸ばし、震える手で鏡を掴み、問いかけました。


「世界で一番美しいのは誰?」


鏡の表面が揺らぎ、響く声が答えました。

「白雪姫。それは白雪姫。」


その答えを聞いた瞬間、リリアンの胸に様々な感情が押し寄せました。

最初に浮かんだのは、予想外の安堵でした。


「生きている…白雪姫はまだ生きているのね。」


しかし、その安堵はすぐに、もっと大きな怒りと憎悪に塗り替えられました。


狩人が自分を欺き、白雪姫が無事であることを知った彼女の目は、

再び狂気の光を放ち始めました。





~白雪姫の居場所を知る~


リリアンは鏡を見据え、さらに問いかけました。

「白雪姫はどこにいるの?」


鏡は再び答えました。

「白雪姫は森の奥、こびとたちの家にいる。」


その言葉を聞いたリリアンは、唇が引きつるように笑みを浮かべました。


その笑みには喜びも哀しみもなく、ただ冷たい決意だけが宿っていました。


「そう…あの子は、まだ幸せに生きているのね。」


リリアンは静かに鏡を机に置き、立ち上がり冷たい声で言いました。


「ならば、今度は私の手で終わらせる。

 どんな手段を使ってでも、あの子を亡き者にしてみせる。」






~暗い決意~


リリアンはクローゼットを開け、中にしまっていた黒いマントを再び手にしました。


その手は、もはや震える事はありませんでした。

リリアンの心は、迷いや良心といった感情が影を潜め、

ただ一つの目的だけが支配していたのです。


「すべてを取り戻すのよ。

 世界一美しいのは、この私でなくてはならないのだから。」


リリアンの声は低く、冷たいものでした。


リリアンは静かに部屋を後にし、計画を練り始めました。





続く~第九章へ~





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