第六章:~森の中へ~
金貨に目がくらんだ狩人は、
どのようにして白雪姫を森へ連れ出すか考え、妙案を思いつきました。
庭園の端近くに白雪姫が来た時、狩人は足を痛めたようにしゃがみこみました。
純粋な白雪姫は、狩人のそばへ駆けより声を掛けました。
「どうなさったの?大丈夫ですか?」
その瞬間、狩人は姫を持ち上げ、
持っていた大きな袋の中に滑り込ませたのでした。
「きゃっ!」
姫は短い悲鳴を上げましたが、群衆の騒音にかき消されました。
狩人は姫の入った袋を担ぎ、大急ぎで城を後にしました。
狩人は城から遠く離れた深い森へと走りました。
しばらく走り続け、静かな森に着くと、
袋を地面に置き、ゆっくりと袋の口を開けました。
中から顔を出した白雪姫は
「驚きましたわ!なぜこのような事をなさったの?」
と、狩人を澄んだスミレ色の瞳で見つめました。
姫は不安そうではありましたが、その瞳には純粋さと信頼が溢れていました。
「…姫に森の美しさを伝えたかったのです。
どうですか?この森の美しさ。
お城もお城のお庭も素晴らしいですが、自然の森もまた素敵でしょう?」
姫は周りを見回しながら
「そう・・・でしたの・・・まあ…本当に!これが森なのね!」
初めて見た自然の美しさに魅了された姫は、目を輝かせました。
そんな姫の姿に、狩人の心は揺れ動きました。
こんな無垢な姫を殺すなんて、僕にはとても出来ない…
白雪姫が夢中で森を見つめている間に、狩人は静かにその場を立ち去りました。
「ごめんなさい…姫様。」
狩人は森で、一頭の鹿を仕留め、その心臓を取り出し袋に詰め込むと、
一目散に城に駆け戻りました。
~金貨と偽りの報告~
城の西門に着いた狩人は、
黒いマントを纏った女の前にひざまずき、袋を差し出しました。
「ご命令の通り、姫の心臓を持ち帰りました。」
リリアンは袋を開け、中を覗き、冷たい笑みを浮かべました。
「よくやりました。この金貨を受け取りなさい。」
狩人は、マントの女と姫の瞳がとても似ている事が気になりましたが、
黙って金貨を受け取り、深々と頭を下げ、急ぎ城を去りました。
狩人は、もしかしたら王妃が姫を…?と恐ろしい考えを持ちました。
ですが、自身が誰にも言えない行いをしてしまった事の方が、
恐ろしく感じ始めていました。
~森に残された姫~
一方、白雪姫は森の中で一人きりになっていることに気付きました。
白雪姫は少しの間、不安げにあたりを見回し、狩人を探しましたが、
森の美しさと不思議さに心を奪われていました。
「森の奥には何があるのかしら?」
無垢な白雪姫は、恐れることなく森の奥へと足を進めて行きました。
続く~第七章へ~
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