第四章:~白雪姫・12歳の誕生日~

リリアンが魔法の鏡を手にした翌日は、白雪姫の12歳の誕生日でした。


城は華やかな装飾で彩られ、たくさんの招待客が集まっていました。


豪華な料理と軽やかな音楽が宴を盛り上げる大広間の中、

主役である白雪姫は輝くような純白のドレスをまとい、

笑顔で招待客を迎えていました。


王妃リリアンも美しく着飾り、誕生会に出席することを決意していました。


魔法の鏡が告げた「世界で一番美しいのは王妃様」という言葉が、

彼女に再び自信を取り戻させたのです。


「さあ、今日は私も姫の成長を祝いましょう。」

リリアンは心の中でそう言い聞かせ、

微笑みを浮かべながら大広間へと向かいました。




~母と娘の再会~


誕生会の大広間で、リリアンは何年振りかに白雪姫を見る事となりました。

白雪姫はまさに可憐な花が開き始めたような、眩しい美しさを纏っていました。


久しぶりに母と顔を合わせた白雪姫は、リリアンの元へ駆け寄りました。


白雪姫は手を伸ばし、リリアンの手を握りしめ、瞳を輝かせながら言いました。


「お母さまとご一緒出来るなんて、本当に幸せです。

 お母さま、ありがとう」


その声はまるで小鳥のさえずりのように柔らかく、愛らしい声でした。


リリアンは一瞬、その美しく白い手を振り払いたい衝動に駆られましたが、

何とか我慢し、優しいまなざしを姫に向け、微笑んで答えました。


「体の弱い母でごめんなさいね。

 でも、あなたが幸せであることが、私の何よりの喜びなのですよ。」


その様子を見ていた王・エドワードも、満足そうに笑いました。

「リリアン、世界一美しく可愛い、私たちの姫の12歳の誕生日を一緒に祝おう」


リリアンはエドワードに向かってにっこり微笑みながら

「そうですね。」

と答えました。


ですが、エドワードが自分を一瞥しただけで、すぐ姫に目線を移したさまに、

心の奥底で別の感情がくすぶっているのを感じました。





~揺れる王妃の心~


会場に集まった人々の目線は、すべて白雪姫に向けられていました。


「みんなが注目しているのは、この私ではなく、あの子…」

そう感じる度、リリアンの胸の奥で、黒い感情がふつふつと沸き上がってきました。


「魔法の鏡は『私が世界で一番美しい』って言ったのだから、

 私は信じていればいいのだわ。」


そう自分に言い聞かせながらも、

リリアンの心は不安と嫉妬に揺れていたのでした。





~魔法の鏡の声~


その夜、誕生会を終えたリリアンは、

自室に戻り、直ぐに魔法の鏡を手に取りました。


不安な思いをかき消す為、リリアンは鏡に問いかけました。


「世界で一番美しいのは誰?」


鏡の表面が揺らぎ、静かな声が響きました。


「白雪姫。それは白雪姫。」



その瞬間、リリアンの全身から血の気が引き、

手から鏡が滑り落ちそうになりました。


「いやーーーー!」

声を上げて泣き叫ぶリリアンの声が、響き渡るのでした。




続く~第五章へ~

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