第3話 名古屋のコメダが、リフレインして、ペンとウイロウ

台所シリーズ 第2部 『台所はせかいをかえる』 長旅編

第3話 名古屋のコメダが、リフレインして、ペンとウイロウ


1 胆振地震(2019年)の記憶のピース


パソコンをとじて、5分だけ寝ようと目を閉じた。

すると、また名古屋の朝を思い出し、次いで北海道のあの日がよみがえった。2019年、秋。


記憶のピースって、思いがけない場所にはめこまれているものだ。


あの時、北海道は46時間、電気のないブラックアウトを経験した。

秋といっても、まだ夏の名残があった9月。

尊い命が、40名以上失われた。


その日も、私は有給休暇を取っていた。4年が過ぎた今、ようやくその事実を思い出す。

電気のない日々——それも、涼しく、朝晩にストーブを使わずに済んだ日だったのが幸いだった。すべてが手探りだった。道内全域が、同時に不自由を強いられた。日本でもこんな広域は、初めての経験。

地下鉄を使う同僚は、職場にもこれない

信号の消えた交差点を、息をつめるようにして職場へ向かった。

水道インフラを担う部署として、自治体との連絡だけでなく、最も大変だったのは住民への対応だった。電気のない中、住民は「いずれ断水になる」デマだとは一言ではかたづけたくない話が、SNSでひろまってしまった。

スマホのバッテリー残量を気にする人々。

残りの電気を「何に使うか」が、命にかかわる選択となった。


今思えば、あの経験に最善の答えはなかったのかもしれない。

あらかじめ「この停電は46時間で終わります」と予告されていれば、違っただろうが——そうはいかないのが現実だ。


通電が再開されたのは、9月6日夜から7日朝にかけて。都市部や医療機関が優先された。

9月7日午前11時頃には、ほぼ全域が復旧。

だから「32時間だった」と記憶する人もいるという。

けれど、暮らす場所や立場によって、あの「46」という数字の重みは、違う。



2 名古屋のコメダ(2022年秋)

あれから、4年。

名古屋・コメダ珈琲店のテーブルの上。

有給休暇中の伸子のスマホが、4回震えた。


コメダにはテレビがなく、伸子はバッグの中身を確認しながら、スマホの重さを感じていた。

電話の相手は、職場のえりちゃん。彼女の声は、はっきりてきぱきとしたものだったが、その声のいつもの明るい音色で、スマホの重みはきえた。



「縣さん。今、ナゴヤですよね?電話で話せますか?月曜、初の一人担当でして」


「大丈夫よ。金曜日も月曜日も休みとっちゃって、ごめんね」


口にした「ごめんね」が、少し悔やまれた。

それが働き方改革を遅らせている——わかっていても、どっぷりつかった昭和風呂から抜けきれない。


「どのような手順で、、、」

 伸子の担当している地域は、新たにできるエスコンフイールドで、急発展しようとしている。

地域住民ねがいあっての球場だが、その開発によって、水がでないということでもあれば、いい機運も変わりかねない。


 バックのなかのアイパットをだす。

バッテリーの残量36パーセント。やっぱり、充電コード2本もってくればよかった。


そもそも、おもいかけず、桑田さんのコンサートの道中で、スマホだけではたらず、念のためとおもってもってきたアイパットをつかってていた。


――やっぱり、充電コード、2本持ってくるべきだった。



その瞬間、伸子の世界が、何かがはじまったのだ。

旅の本番は、ここからだったのだと、後から気づいた。


思い返せば、会社の電話でも、バッテリーの残量の36パーセントでもなく、

「ペンがなかった」ことが、すべての始まりだったのだ。

この名古屋の喫茶店コメダのできごとを、昨日のことのように丹念におもいだしながら、伸子は、長旅における会社への報告書の書き出しに思案をめぐらした。


バッグには、大切な紙があった。

コロナ禍の中、響香とともに作った「花人クラブ 幹事だより」の裏紙。


けれど、ペンが、ない。


響香がくれた北海道大使・ナキウサギの「キュンちゃんペン」が、どこにも見つからない。

孫の凛に見せたときに、忘れたのかもしれない。


えりちゃんに、10分したら、また電話する。と、告げた。

彼女は、すでに初期対応は、きちんとすでにこなしていた。

残りの部分を段階的に変更する手順には、数通りの策がある。

アイパットで、北広島地域の地図をだす。頭の中を整理するのに、ペンと紙がほしいとおもった。


紙は、響香から渡された、「花人クラブ 幹事だより」が、クリアファイルにはさまれていて、その裏紙なら、つかえるとおもった。。


花人クラブというのは、かつて 白い恋人パークでボランティアをしていた仲間のあつまりだ。


そして、この幹事だよりは、コロナ禍で みな集まることのできない、もどかしさを埋める苦肉の策として、響香とふたり一年かけてつくったものだった。別々にいって、感想をのべあった恵庭のはなふる。恵庭の銀河庭園。江別のメモリー。おすすめガーデンYouTubeのカーメン君。大切な紙。その、裏紙は、あった。


 


紙は、あっても、ペンがない。


響香から、「キュンちゃん私すきなのよ」といって、北海道大使のかわいいナキウサギがアイヌの帽子をかぶっているキャラクターのペンがはいっているはずだった。限定もので、わざわざ、ネットで買ったという。そんな、大事なペンがない。


 孫の凛にみせたときかな?


いくらごそごそしてみつからない、落ち着いてさがせばありそうだが、スマホをポケットにいれて、左手にアイパットにもってレジにいった。


「ペン、貸してもらえませんか?」

「ありませんね」と、レジの女性。動作は“探すふり”に見えた。

途方に暮れる伸子。




どうしようか、と迷っていいると、


その時、「使いませんか?」と差し出されたのは、ダビデのペンだった。


異国の王子様のような彼。

差し出したペンは、見たことのない高級品。

そこに刻まれていたのは、「dabide」の文字と、「made in JAPAN」。


そのペンで、伸子はえりちゃんへの指示を書いた。


「私が考えたのと一緒です。じゃあ、明日の申し送りは不要ですね」と、えりちゃん。

「名古屋旅行、楽しんでくださいね」と言い残し、電話は切れた。


ちょっと冷たいけれど、えりちゃんらしい。


「何かあれば、パソコンで通話記録を見てください。お休み中にすみません」


さらに付け加えるように、「あ、私、ウイロウってまだ食べたことないんです。でも、明日から4日間休みを取っています。名古屋旅行、楽しんでくださいね」と一方的に電話を切った。


少し冷たい印象を受けたが、えりちゃんらしいと思う。入社したばかりの頃から知っている彼女は、いつまでも可愛らしい存在だ。切れてているとわかってるスマホに「おつかれさま」とささやいた。


「ウイロウ、買って帰らなくちゃ」と、伸子は独り言のように呟いた。


一方、後ろの席に座るダビデは、その一部始終を静かに見守っていた。


彼はスマホを手に、伸子の声を翻訳アプリで記録していた。異国の言葉「おつかれさま」が気に入り、小声で何度も繰り返してみる。


「おつかれさま…おつかれかま…」


その様子を誰も気づいていない。伸子自身も、ダビデが背後にいることに気づかないまま、再びペンをじっと見つめていた。


アルファベットで、dabide と、刻印されいた。


ダビデ、名前かしら?


よく見ると、made in JAPAN

とも、刻印されていた。

どこのメーカーかしらと、マークもさがした。

あの白いシャツの異国の青年は、どこにいったかと、コメダの店内をみまわした。

すぐ、後ろにすわっているダビデを、伸子はみつけられなかった。

困ったわ。

「初めての1人旅、六十三歳、名古屋で、コメダに長時間滞在」

と、タイトルをつけてみて、自らをりすった。歳は少しさばを読んだ。

別に、コメダに、不服が、あるわけでもないが、

札幌の誰もが知っているこの看板の写メをLINEに、送信したら、本当に、名古屋にいったの?

って言われかねない。

スマホに目をやると、まだ10:45と、表示されていた。

まだ、こんな時間。

名古屋空港には、四時に行けば、十分だ。

昨日は、桑田さんのコンサートという、伸子の世紀の一大イベントがあって、行動のシミレーションをなんども、えりちゃんや未希としたが、今日は、全くのノープランだ。

いくつか考えていた、プランをみるべき、手帳みた。

手帳には、伸子が昨日もってきた、字がたしかにかに、書かれている。

あら、やっぱり、この名古屋に、ペンをもってきただわ。

昨日のペンを探すまえに、このペンをかえさなきゃ。

また、丹念に店内を、みわたす。

あの異国の王子様は、いない。

こんな、高級なペン、もってかえってしたら、後味わるくて、この名古屋旅行を台無しにする。

もう、一回しつこいくらいに、店内を探す。


ダビデは、そんな、伸子を、なんとも言いようのない表情で、膝の下にスマホをおき、背中で見ている。


ダビデは咳払いをした。伸子は後ろ振り向いた。白いシャツを着た異国の王子様は、甘い笑顔を浮かべて見つめてきた。青年だと思っていた、その王子はよく見ると4、 50代位だった。でも、イケメンには変わりなかった。芸能人に例えると木村拓哉と言うところだろうか。


「グランメゾン東京」の再放送で、木村拓哉が白いシャツを着ていたのをこないだ見たばかりだった。柔らかい表情は、草薙剛君に似ていて、「男の僕だって木村くんかっこいいと思いますよ」と謙遜した、あの剛くんの笑顔。「あなたもそれ以上、充分かっこいいよ。」って、つい言いたくなるようなあの笑顔。そして声は福山雅治だった。


その声で、


「おつかれさま」と、ダビデはいった。


(なに、この、シチュエーション、おつかれの ご褒美かしら?)


くりかえされる、


「おつかれさま」


(またキムタク、剛、福山の三重奏、たすけて、私は、それを喜ぶそんなキャラじゃない。)


白いシャツきたダビデは、ドラマの中のグランメゾン、キムタクとおなじように、たっている。


ここは、コメダななのに、そして。


「あの、前 すわっていいですか?」


(かたことだけど、声 やっぱり 福山さんににている。響香さん、すきだっていってたな。今は、それどころじゃない。)(イントネーション 名古屋風?名古屋風がどんなのだかわからないけど)


「あ、でも」


「だめですか?」


(うん。もういい。これでコメダの三重奏。もういい。おねがい離れて。)


だめですか?にこたえて、伸子が「yes」というと、


「thankyou」


ダビデは、長い腕で、静に伸子ののみかけのコーヒーカップの場所を動かした。


(そうだ。早く ペンかえさなきゃ)


「thankyou」


ダビデは、剛の笑顔でもうしっかり、私の席のまえにゆったりすわっている。


横の席で、さっきまで、母親の「ぴーちく名古屋コメダ会談」していた、AとBもすっかりだまって、こっちの事の成り行きを観察している。


(おちつけ。おちつけ。仮にも、私は60代、れっきとした社会人だぞ。英会話だって、、、、)


(はじめての一人旅、あー、これじゃ 凛のほうがまともの対応しそうだわ)


「"Sorry for surprising you. Actually, I saw you yesterday as well. When I saw you entering Komeda, I couldn't help but go in with you. You went to the Water History Museum yesterday, right? I was watching the exhibit you were so keenly looking at from behind. When you were looking at the bus timetable, you dropped your pen. It’s a cute pen. I could exchange it if you'd like. Would that be okay?"」


(最初のそーりーとおっけいしかわからない)


(イエス、ノーどっちが、せいかいなの?)


(ペンを貸してもらったのは、私なのに、なぜ、そーりー、日本人じゃあるまいし。)


(玉木先生 たすけて。)


伸子は、わすれていた中学校一年の英語の先生の名前をおもいだした。


「ワンモア プリーズ」


こんどは、ゆっくり


「"Sorry for surprising you. Actually, I saw you yesterday as well. When I saw you entering Komeda, I couldn't help but go in with you. You went to the Water History Museum yesterday, right? I was watching the exhibit you were so keenly looking at from behind. When you were looking at the bus timetable, you dropped your pen. It’s a cute pen. I could exchange it if you'd like. Would that be okay?"」


(ぺん ぺん って昔のギャグ?)


(きゅーと、ぺん)(ペンを返していないことに気づいて、)伸子は、はきはきした小学生のように、


「さんきゅう。ジス いず きゅーとぺん」と伸子はダビデと刻印されたペンをダヴィデにさしだした。これで返却終了と胸をなっでおろすはずだった。




三重奏王子


「こまったな~」片言の日本語で三重奏王子様がと、伸子の次のセリフをまっている。


伸子は、「HELP。Yourself」


三重奏王子は、「いいんですか?」と、福山雅治の声で剛君のえみをうかべて、伸子の手をとって「あ・り・が・と・う。」といった。声が声だから、「どんなときでも、ぼくは、スターとしては、合格だ。」そんなありがとう。に響いた。


(もう、さっぱりわからない。はやく、この店をでよう。札幌のコメダでコーヒーのみたい。)


「グッドバイ」そう言って、伸子は席をたった。


その瞬間、ダビデは、伸子の腕つかんで、ひきもどしたので、


つい「やめてください。」と強い口調でいった。


ダビデは、また、キムタク、つよし、福山の三重奏を武器に、「おわすれですよ。大事な、アイパットでしょう。世界最高水準のお仕事見せていただき、感謝しています。もう少し、お仕事のお話きかせていただけないでしょうか?」


今度は、けっこう流暢な、日本語だった。


三重奏王子とまさかのかたこと日本語は、三重奏王子のポテンシャルを世界最高レベルにひきあげた。


後から聞いたことだが、日本のアニメ、漫画が好きで小さい頃から、日本語に慣れ親しんだらしい。


伸子のグッバイは、撃沈し、このコメダと三重奏王子と対面まだづづいている。




そして、通りを挟んで、茶色のジャケットのようちゃんもいた。本当の名前は、いまだに、わからない。


ようちゃんは、一時間まえから、伸子の斜め前にすわっていた40半ばの男性だ。


コメダの店内をみわたしたとき、彼が同じ北海道から飛行機にのって、この名古屋におりたち、きっと大事な人の明日の四十九日きたのだろうと推察して、今日は、同じ道民にこの窮地の場を取り次いでほしいと、何度か熱い視線をおくっているが、目をあわせようとはせず、こちらの話に一人で耳を立ててるような気がした。




 黒いスーツにあうくるぶしまである新調した革靴は、この季節のこの名古屋には不似合いだ。そして、彼の横にある六花亭のお菓子がはいっている紙袋。4つ、か5つはいっている。きっと親戚に配るつもりだろう。六花亭では、直接、到着する名古屋に送ることできるけれど、彼にはもう、この名古屋に受け取る人はいないのだろう。帯広に本店をおく、北海道の老舗菓子店。六花亭。


坂本直行さんの包み紙と紙袋はすてきだ。エゾリンドウ、ハマナシ、オオバノエンレイソウ、カタクリ 北海道を代表する山野草がえがかれている。坂本直行さんは、坂本龍馬の甥の孫で、北海道・十勝で開拓者として生きた後、画家と転身したと聞く。


六花亭のお菓子は、もちろん千歳空港で積まれてうってはいるのだけれども、ようちゃんの紙袋は、それではないのも、当然のようにわかった。きっと札幌か岩見沢で前日に用意したものだろう。通常の贈呈用の鮮やかな包み紙ではなく、悲しみに寄り添う時を重ねた肌色に六花の花を咲かせた包になっている。


心の中で伸子は、「同郷のよしみで、この会話のづづき助けて。同郷だって、ばれてるんだから」「ダビデとの会話の返答に、私は、北海道のお菓子なら、帯広の六花亭がおすすめよと、同郷の彼のお土産の選択をこの異邦人に素晴らしいと今まで覚えた英単語並べて、遠回しにいっているんだから」と日本語の心の叫びを再三、視線で送っていた。ダビデのまえでは、


いふ(もし)you want to buy a gift from Hokkaido, I think Rokkatei’s sweets are nice.


The wrapping paper is pretty, too.


I heard it was drawn by the nephew of Sakamoto Ryoma.


Do you know Ryoma?(もしあなたが、北海道のおみあげをかうなら、六花亭がおすすめ。包装紙もいい。それは、坂本龍馬の甥がえがいた。坂本龍馬しっている?)






Rokka means "six flowers," but look:


Ayame (Iris), Ezo-rindo (Gentian), Nirinsou (Anemone), Hamanashi (Rugosa rose), Kijimushiro, Ezo-torikabuto (Monkshood), Nawashiro-ichigo (Wild strawberry).


(六花亭のいみは、六つの花。あやめ、えぞりんどう、にりんそう、はまなし、きじむしろ えぞとりかぶと、、、)


1, 2, 3, 4, 5, 6, 7...


Oh? That’s more than six!


Isn’t that funny?




ダビデは、「わん。あやめ。つー。えぞりんどう。」


「おっけー」と、伸子。


「えぞりんどう」「What?(なに?)」


「えぞ いず 北海道」


「おういえー」


「りんどう」


ウッドロード?あミステイク。りんどう いず りんどう」


「にりんそうは、北海道大学にきっとさいているわ」「えぐざむぶる、北海道ユニバース 」




(また、もじゃもじや頭に視線を送くる。六花亭のふくろは、私に見えるように置きなおしてくれてるけど、くすくすわらっているよ。あの人)あとから、ようちゃんとよぶことになった同郷の彼をこのとき、心の中でとっさに「もじゃもじ」となずけた。


「えぞとりかぶと」これは、毒があるとジェスチャーまでした。


坂本龍馬の話もした。この絵をかくのは、坂本龍馬のファミリーだと。


「おい」という英単語は、ようやっと、おもいだせたが、もう一回、坂本いっこういず龍馬ファミリーと念をおしたが、大丈夫だったか調べたい。


龍馬は日本の続く歴史を黒船の風から守った。Ryoma protected Japan's continuing history from the Black Ships' wind


伸子がいったら、


ダビデは、


「Sakamoto Ryoma worked hard to help form the Satchō Alliance, an important partnership between the Satsuma and Choshu clans.


These two powerful groups were enemies at first, but Ryoma acted as a mediator, helping them come together to fight against the Tokugawa shogunate.


Without Ryoma’s efforts, this alliance might not have happened.」




「坂本龍馬は、薩摩藩と長州藩の重要な同盟である薩長同盟の成立に向けて懇慈に屈力しました。


この2つの強大な勢力は最初は敵同士でしたが、龍馬は調停役として働き、彼らが協力して徳川府に立ち向かうことができるよう助けました。


もし龍馬の努力がなければ、この同盟は実現しなかったでしょう。」


と、暗唱した文を読むかのごとくこの日本史の教科書をよむ三重奏王子、福山の声が、しずかに、ひびいた。


(ふくやま、、、、、あなたが龍馬で、、、、、数年前、 龍馬伝ってNHKの大海ドラマに、、、、あなたはふくやまじゃなかった。ダビデね)


心の中で叫ぶ声は、頭のなかのねじというねじが、はずれて、あっちこっち飛んじゃっているようになった。




「ドラゴンホース。」「龍馬いずドラゴンホース」三重奏雅春ダビデはささやいた。


そう彼は、つよし君の笑顔でキムタクの腕組で伸子の息の根まで、うばってしまった。




まだ、もじゃもじと視線があわない。


あった。


向かいの同郷のもじゃもじ頭の彼と、ついに視線があった。




視線で、視線で。


えりちゃんに「この書類、今、このタイミングで部長に持っていくべきだ」と小刻みなうなずきと視線で伝えるように。


そしてもう一つ、「私ではなく、あなたがしたほうがいい」と。


えりちゃんは一瞬戸惑い、「私?」と小さく人差し指で自分の顔を指す。


そして右手の四本指を顔の前でワイパーのように振る。「違う違う。」


「私よりあなた。」と強い視線びゅーむ。


えりちゃんは「しょうがないなぁ」と、しぶしぶした顔をする。


けれど、部長の席の一歩手前で、女優のように最高の笑顔を作り、


「確認のうえ、早急に押印をお願いします!」


あの視線の合図作戦 は、成功率が非常に高い。私は、「部長の前だと、いつも素晴らしい笑顔ですね」といえばいい。もっと、上級作戦は、「カレダ次長にばれたら困りますから、目を皿のようにして、確認して、印鑑くださいね。」っといって、書類の意味を公然とえりちゃんは皆に示すのだ。


その視線の合図 作戦 基本編を 見知らぬ同郷の彼にやってみた。


向こうの席のもじゃもじの彼と細かな笑顔と最強の困った顔をいれて、最後の視線ビュームを試みた。すると、、


彼はまるで神のように、私の隣に立ち『なにかお手伝いできますか?』と、英語でダビデに向かって立ってくれた。「MAY  I HEIP YOU?」




そう、彼は堂々と立ってくれた。(同郷の神様、たよりになります)こころで精一杯感謝した。


ダビデは、彼に、流ちょうな英語で自己紹介したようで、もじゃもじの彼は、にゃにやうなずき、聞き取れれたかのかうな顔をしていた。


この私の救いの神は、「よう」と、名乗ったようで、決め顔で、ダビデをみつめた。


三重奏王子、ダビデは、「ようちゃん」と、彼をよんだ。


三重奏王子とようちゃんは、すぐ仲良くなったみたいだ。


ふたりは、このコメダにかかる曲におもいでがあるらしい。


音楽の話でもりあがっていた。


ようちゃんは、「僕にあとは、まかせて、レジで、会計して、席をたっていいよ」って、目で合図していた。


でも、伸子は、このようちゃんと、ダビデの話をこの席でもうすこし観てみたかった。この特等席で。他のひとも、この特等席が、あくならば、座りたいという顔になっていたけど伸子は、譲りたくなくなった。ぴーちくコメダ母親会談の・AとBも観ている。


伸子は、ようちゃんに「いいの。まだ、十分時間あるから。」と、さっきと違う視線の合図をした。ようちゃんは、「君。ずいぶん勝手だな」な、って顔をした。


音楽の話が、もりあがってきたところで、昨日は、桑田さんのコンサートにいってきた、素晴らしかったと、つたない英語で伸子が話すと、ますます、会話がもりあがった。三重奏王子ダビデは、「愛しのえりー」なんかを小声でうたって、最初のフレーズが、世界にあいされるわけと、ダビデは、はなした。




泣かしたこともある。寄り添う心があればいいのさ。




還暦をすぎた伸子は、コメダのコーヒーの中に とろけこみそうだった。。




名古屋の回想は、ひとまず、終わる。


「まだ、名古屋の旅の話もきいていない。」響香の声が、こだました。


いままで、響香から、正月は、年賀状のやりとりだけだった。


だけれども、ちょっとラインしてみよう。


「あけましておめでとう」響香はから、でんわがきて、新年会をしようということになった。


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