第23話 五つ子

 それは畑作りに行き詰まった時期だった。主にララが担当していたが、彼女だけでは限界がある。しかもソワレからは食堂で使う穀物や野菜の注文がたくさん入って来た。


「どうしましょう? これ以上はさすがに私でも・・・」

「そうね。村の人に頼んでいろんな作物を作ってもらったら。それでソワレの注文をこなせるかも」


 だが村の人たちにも作物の卸先がある。はたしてこちらの分を引き受けてくれるかどうか・・・。私はこの難題を何とかしなければならない。

 その時、あの4人が現れた。麦藁帽に作業着を着た男女4人。遠くから並んで歩いてくる姿は印象的だった。その姿を見て飛び出して行ったのはララだった。


「キキ! ジジ! ナナ! ミミ!」

「ララ! 手伝いに来たわよ! もう大丈夫よ!」


 4人はララの兄弟姉妹だった。ツジシン村からやっと来てくれたのだ。5人は抱き合って再会を喜んでいた。ララが屋敷に来て以来だから、かなりの期間、会っていなかったのだろう。


「よかったわね。ララ」


 私がそばに寄るとララが4人を紹介してくれた。


「お嬢様。私の兄弟姉妹たちです。キキ、ジジ、ナナ、ミミです。村で両親と畑仕事をしていました」

「ようこそ! コロ牧場に。歓迎しますわ!」


 私は4人を笑顔で迎えた。


「お嬢様。ララがお世話になっています。お手伝いに上がりました」


 キキ(?)が代表してあいさつした。4人は眼鏡こそかけていないが、髪形を除けばララとそっくりだ。顔だけなら見分けがつかない。


「それはありがとう。助かるわ。それにしてもみんなそっくりね」

「はい。私たちは5つ子なんです!」


 私は驚いた。そんな話、ララから聞いたことはなかった。兄弟姉妹が多いとしか・・・。そう言えばララは物語ばかりで、あまり自分のことを話さなかった。


「この牧場を手伝ってくれるのはありがたいけど、ご両親の方はいいの? 4人もいなくなったら手が足りなくなるんじゃないの?」

「大丈夫です。兄弟は他にもいますし。どうせどこかに奉公に出るつもりだったのですから」


 キキはそう話してくれた。それならここで思う存分、働いてもらおう・・・私はそう決めた。



 次の日から4人は仕事をしてくれた。元の村でやっていたから手慣れたものだ。土地はどこまでもある。それを耕して畑にしていく。人手が増えたから畑の方はかなり拡大出来ていろんなものを植えられる。4人がいろんな野菜や穀物の種も持ってきてくれたので、多種多様な作物が取れるだろう。


 それに密かにリュバンが多少の魔法で成長を促進してくれる。それでみるみる大きくなって作物を収穫できた。その量はオペラ食堂に卸しても町の市場で売るほどある。


 それにチーズ作りだ。バターの方はすでに作れるのだが、チーズとなれば話は別だ。特殊な技術と熟成期間がいる。チーズ専用の丸太小屋を作ってそこでやってみることにする。

 幸いミミ(?)がその製法を知っていた。彼女はある期間、村のチーズ工場に勤めていたようだ。必要な物をそろえ、畑仕事の合間に試してもらっている。近いうちにおいしいチーズができることだろう。


 あとは・・・ワインということになった。私は飲んだことはないが、ジジ(?)が言うにはワイン用のブドウの栽培に向いているということだ。確かに隣村だが手作りでブドウ酒を作っている。足で踏んでブドウをつぶしてそれを発酵させて・・・というのを聞いたことがあった。それならここでも作れるはず・・・。

 ツジシン村もブドウ酒を作っていた。それを手伝いに行っていたジジ(?)もできると思ったのだろう。


「ここに棚を作って・・・」


 彼はブドウ栽培の計画を立てていた。これもやって行こう。ブドウ酒なら町で高く売れるはずだ。牧場の財政がかなり豊かになるだろう。



 あとはアレの栽培を試さねばならない。それは「コメ」だ。王都にいるソワレの知り合いだけが細々と作っているようだ。さすがにコメだけはキキたちにも経験がない。それでその人に聞きに行くことにした。ついでに種の方も・・・。

 だが私は王都追放の身だから王都には行けない。だが都合がいいことに、その人は王都から外れたヤパン村に住居があり、コメを作っているようなのだ。

 私はその人に会いに行くことにした。そこでソワレにその人のことを聞いた。


「どんな人なの?」

「異国風な感じの初老の男の人です。名前は確か、カスケでした」

「コメのことについて頼めるかしら?」

「さあ、どうでしょう。少し頑固なところがありましたから。気が向かなければどうやっても無理でしょう。でもそんなに偏屈ではないと思います」


 ソワレの言いようでは何か気難しい人のようだ。だがここであきらめるわけにはいかない。コメはある国では主食としており、その味は素晴らしく、いろんな料理に合うようだ。特にソワレが作っている料理と相性がいいらしい。またパンのようにこねるなどの作業はいらず、水で洗って炊くだけで食べられるようだ。


「何とか頼んでみよう」


 私はヤパン村に出かけることにした。お土産に卵焼きパンをもって・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る