祭りの後
カナカナカナ...
日が暮れて、とっぷりと。祭りの後。
神輿、屋台、盆踊り。喧騒が過ぎ去ってさざめき。
遠くの方で子どもたちがはしゃいでいる声。大人たちは酒盛り。
君は浴衣の裾や下駄の鼻緒を気にしながらゆっくりと歩く。
僕はまあ特筆すべきものもない。並んで自転車を押す。
ちりん、ちりん。
と、どこからか風鈴の澄んだ音色。
軒先に吊るされた形や色がメロディになる。
木々から降ってくる虫の音の伴奏に合わせて。
あの星座はなんていうんだっけ、独り言のように呟く。
夜空を見上げる横顔に僕は、理科の授業で得た知識を引っ張り出す。
横断歩道で立ち止まる。信号は赤。
等身大の双曲線。その中間にある宇宙にひとつだけの特異点を探す。
誰かが勝手に点と点を線で結んでくれたらどんなに楽だろう。
ちょうどアルタイルとベガみたいに。
心臓はテンポを刻む。信号は青に変わる。
...
静寂が聞こえる。
それはどんな音よりも雄弁に語りかける。
二手に分かれる突き当たり。
付点四部休符みたいな間があって、君はまたねと手を振る。
僕は同じ言葉と動作をコピペみたいに繰り返す。
カラカラカラ...
振り返らずに自転車をゆっくりと押していく。
地面を蹴ってサドルに飛び乗る。
あの風鈴はまだあの軒先で音符を奏でているだろうか。
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