第3話 彷徨の二日

ゴブリンたちを退けたものの、タクミの状況は依然として厳しいものだった。自分がどこにいるのか、どうすればここから抜け出せるのか、全く見当がつかない。


食料も水もない。森の中を二日彷徨い続け、疲労と空腹で意識が朦朧としてきた。喉はカラカラに乾き、足は棒のように重い。


(本当に、死ぬかもしれない……)


そんな弱気な考えが頭をよぎる。元々インドア派で、運動とは無縁の生活を送ってきたタクミにとって、この森はあまりにも過酷すぎた。


その時、再び頭の中に声が響いた。


『己のスキル、【反射】のレベルを確認せよ。』


唐突な声に、タクミはびくりと体を震わせた。「レベル……?」


声に促されるまま、意識を集中してみると、頭の中にぼんやりとした情報が浮かび上がってきた。


【ワタナベ タクミ】


レベル:1

スキル:反射 Lv.1(受けた攻撃をそのまま反射する。反射回数:1)

「反射回数……1?」


ということは、一度攻撃を受けたら、しばらくは反射できないということだろうか。ゴブリンの群れに囲まれた時は、連続で反射できていたような気がするが……。


『レベルが上昇することで、反射回数や威力、その他の効果が付与されるだろう。生き残るためには、スキルレベルを上げることが不可欠だ。』


再び響いた声に、タクミは頷くしかなかった。どうやら、この世界で生き残るためには、戦うしかないらしい。内向的な性格のタクミにとって、それは気が重いことだったが、他に選択肢はない。


(何か……食べられるものはないか……)


よろめきながら歩いていると、木の根元に赤い実がなっているのを見つけた。毒があるかもしれないという不安もあったが、空腹には耐えられなかった。意を決して一つ口にしてみると、甘酸っぱい果汁が口の中に広がった。


(これは……大丈夫そうだ)


いくつか実を口にし、わずかに体力を回復させたタクミは、再び歩き始めた。森の出口を探して、ただひたすらに。

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