第2話 俺の仲間
俺はチャムに言われた通り毎朝起きると小瓶に血を1滴入れて行った。
そうだ、ここは辺境の地、荒れ果てた土地へ俺は送られたのだ。
要は俺が邪魔なんだ、卑屈にはなりたくはないがその様に感じられる。
小さな館が建っていてペンキも木の表面も剥がれて見るも汚い外観、
家の中に家具といえる物はほとんどない、ベッドが2台あるだけだ。
これからこんなボロ屋が住まいとなるのか。
「うわぁこんな所で寝るの俺はやだね」
チャムにまで嫌われてしまった。
タイトといえば俺のスーツケースに自分が入れるスペースを作って寝ている
ちゃっかり者である。
周りを見渡すと森が広がり樹木が好き放題に伸びている。
奥の奥の山まで森が広がっている。
鬱蒼として、枝葉が邪魔をして中は全く見えない、光も差し込まない、奥に入る事も難しい。
枝を切りながら進むしかない。
俺とタイトとアーロンは森へと入って行った。
枝を切りながら進んでいき、
「こんなに木がぼうぼうなんだから燃やしてしまえ」
タイトは火を吹いて枝葉を燃やして行った。
火事になったら大変とアーロンは後ろから魔法で鎮火をしていく。
「これじゃぁ何年かかるか分からない」
ブツブツ文句を言っていると
気の弱そうな獣人族(?)多分猫であるか、震えながら土下座をしている。
「旦那様ーお願いでございますにゃ、どうか我々をお助けください」
と涙ながらに訴えて来た。
「私らネコ族のアキノニャンニャンと申します」
「おー猫耳です、クリス、やっぱりニャンコは獣人でも可愛ですねぇ
尻尾がフサフサでさわり心地が最高です!」
アーロンはスリスリ尻尾を触りながら話を聞いていた。
説明によるとこの森には数多の獣人属が住み着いており、一番厄介なのが熊族と狼族の様だ。
毎夜縄張り争いをして周りに迷惑をかけまくる、争いが始まるといつも熊の力を見せつける様に猫族は引きちぎられ無惨にも殺されているのだそうだ。
涙ながらに訴える猫が可哀想になってしまった。
「熊ですか、力が強いですね、クリスあなたはクマに勝てますか?」
アーロンは言うが
「いきなりそう言われても・・・」
「毎日赤い水を上げている種はどうなりました?」
「大分しっかりした煙になってきたと思うよ」
アーロンは腕組みをして考えている。
「多分その煙を飲み込むと何らかの魔法が発動するのではないかと思います」
俺はアーロンにしてはあやふやな説明なので心配だったが
「中の煙がしっかりして来たから飲んでみればいいじゃん」
チャムも現れてパタパタ羽ばたきながら俺に言ってきた。
「チャムが言うなら・・・取り敢えず煙を俺の体に入れてみるよ」
と瓶の蓋を開けて煙を飲み込んだ。
「・・・」
「何も起きない、やっぱだめか・・・」
そうこう言っていると狼の一団が現れた、
「一番でかいのがボスか、タイトあいつをまずやらないとコチラがやられる!!」
ボスが向かって来た、タイトが大きく火を吹く、その火に驚いている間に俺は剣で狼の首を切った。
アーロンもほかの狼を剣で撃退をしている。
ボスは斬られても何度も襲って来たがやがて力尽きてその場にたおれてしまった。
体にはタイトの炎が燃えたままである。
俺は最後にトドメを刺した。
するとボスオオカミの魔素なのか、俺の体に吸い込まれて来た。
何と俺は狼に変身をしたのだ。先ほど倒したボスである。
「クリス、その姿は、オオカミ、今倒した狼です」
アーロンが驚いて声が躍っている。
「おークリス、念願の魔法じゃん、やったな!!」
チャムがそう言うので魔法なのだろう。
「これが俺の魔法?相手の魔素を取り込む事が出来る、
倒していく限り無限に強くなれるのでは??」
なんだか嬉しくなって来た。
「やったなクリス、魔法だ、魔法だ」
タイトも喜んで飛び回っている。
俺の想像していた、物が消えたり浮いたり現れたりする事象とは全然違った魔法であるが
強くなれることには変わらない。
スキップしたい気分だ。
「この気持ち、誰か分かってくれーー」
俺は叫んだ!!
森には巨大蜘蛛も生息をしていた。
何でも食べてしまう様で眼前の物全て食料となってしまう。
「お前、食欲に勝てなくて何でも食べちゃうのか?人でも獣人でも」
うかうかしていると生物と言わず木材であろうが鉄であろうが何でも食べ尽くしてしまう食欲だ。
その食欲を抑えるには魔法でお腹一杯と勘違いをさせる事の様だ。
「沢山の食料たべてしまい腹がいっぱいである。もう何も食べたくない」
アーロンが魔法をかけた、取り敢えず何も食べないで我慢をしている様だ。
ただこれだけ何でも食べちゃうなら捕まったとしても牢屋鉄格子でも鎖でも食べてもらえる、味方となればなんと心強いものか。
「蜘蛛さん蜘蛛さん、あなたは人型になれるのですか?」
俺は興味津々で聞いてみた。
「はい!マスター、人型になる事は出来るんでござんす」
なんと綺麗な女性に変身した。
「おー巨大蜘蛛がこんな綺麗な女性になるなんて・・・」
「蜘蛛は獣人とは言わないよな、節足動物、分類は?
まぁどうでもいいか、
「ところで蜘蛛さん貴方にお願いがあるのですが」
「蜘蛛さんなんて言わないでくんなましぃ
わちきは蜘蛛凛と申します、凛とお呼びくださいませ」
「では凛さん、丈夫な糸を履き出して頂けないでしょうか?」
「簡単でありんす、何にお使いになるんでありんすか?」
「熊のボスを捕まえるのに使いたい、
あいつらネコ族を引きちぎってまで自分達の力を誇示したい様だ。
許す事は出来ない」
「それでは糸ではなくこの位太い方がいいと思うでありんす」
とロープを出して来た。
「GOOD、まさに捕まえるのにピッタリだ、これを使ってボスを捕まえるぞ!!」
俺は狼の姿でその他大勢を取りまとめ、熊族への襲撃を計画した。
奴らは力が強くそれを誇示したがる、そこで罠を仕掛けてみる
狼の俺が捕まりそうな距離まで奴らをおちょくる。
誘い込んだ先にはヤリが突き刺さる落とし穴、ありふれた罠だが熊の様に体重の重いと穴から這い上がることが出来ないはずだ。
「あいつらのボスが出てくる様に下っ端を穴に埋めて片付ける
ボスが出て来たところを俺とアーロンで打ち負かす、
凛にもらった燃えても切れないこのロープ
タイトがこれに火をつけて俺たちでボスを縛りっつける」
案外効果がある様だ。
クマボスが動けなくなったところに俺が切り付ける、流石にクマは簡単にはやられない。何度も切りつけていくうちに熊の魔素が俺に流れ込んできた。
「クリス、あなた今度は熊です!」
アーロンが叫ぶ。
「俺たちの勝利だ!!」
クマボスがやられてしまったのでクマ達全員が俺たちに負けを認め降伏をして来た。
NO2のバロン、こいつが俺たちの仲間になると忠誠を誓ったのである。
穴に落ちて負傷した熊も助け出しアーロンが癒しの魔法で傷を治して行く。
負けを認めた熊を今以上に痛めつける事はアーロンの美学に反する事なのだ。
これだけの力持ちが森の開拓を手伝うこととなり順調に木を切り倒し、平地を作って行った。
猫族もクマを怖がりながらも協力してくれている。
何かあると即座に逃げるが・・・
これだけ見事な大木を使わない手はない、アーロンの魔法で木の皮を剥いて行く。
タイトの火魔法で乾かす、表面にやきを入れる、
立派な材木がドンドン出来上がる、普通では入手出来い太い柱にする木材である。
凛に食べられない様食料をたくさん与え、魔法でお腹いっぱいにさせる。
ただ家を設計する建築家がいない、悩んでいると
「エルフ、エルフのお姉さん」
何と向こうに真っ白な髪を風に靡かせた女性のエルフが立っていた。
「ウワァ、相変わらず綺麗だ、エルフ」
「久しぶりね、クリス、覚えてくれていた?」
「勿論、デルタ、会いたかったよー」
何と握手をしてくれた。
俺は感激をして握手の上にもう片方の手を乗せ上下に振ってしまった。
エルフは皆美しい、何と羨ましい人種であるか、俺は目がハートになってしまった。
山のエルフ、髪が真っ白で瞳が深いブルーをしている世にも美しいエルフ。
魔素量が多く強い魔力を発揮をする。
「アーロン様、なんと嬉しいサプライズ」
俺は家づくりよりデルタを眺めていたかった。
その美しいエルフが家の設計をしてくれるという。
立派な材木を使い、デルタが細かく支持を与える。
施工は熊族に、細かい塗装などは猫族と犬族、適正に会う仕事をこなして行った。
内装に必要な資材は都からも取り寄せた。
ーー父の金は使いたく無いが一時的には仕方がないーー
◇
皆で頑張って作り上げた館が完成した。
重厚感のある美しい館。城と言っても過言ではないであろう。
皆お祭り騒ぎである。
沢山の食料を使って作られる料理を振る舞って飲めや歌えやと大騒ぎ。
クマも狼も猫も森の中にいた獣人全てが
楽しい夜を過ごして行った。
その光景を影から見つめる視線
アーロン達の故郷であるエルフの里、南のエルフであった。
次回へ続く
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