第3話 空を飛ぶ


 空を飛ぶ魔獣、スカイタイガーやスカイバードと

虎や鳥、ワニのような顔をしている様々な種類の魔獣が存在する。

野生で生息している所を捕獲して調教をするのだ。

この世界での移動手段につかわれる。虎は力持ちだがあまり高くは飛べない、など其々に特徴がある。

 

 ただ彼らはプライドの高い性格、なかなか言うことを聞いてくれない、生態を理解し調教の仕方を覚える、捕獲から一連の流れを学んでおくと役立つ知識である。


「こちらのスカイドッグは元々いた子です、いずれクリスも捕獲から始めませんと」

淡々と説明する美しいデルタ。

「いやぁデカいけど可愛い顔をしてるなー、おー尻尾、振るのか、

ヨシヨシ、ゴールデンと全然かわらないなー」

 

 俺は動物が大好きだ、特に犬 デッカい犬がお座りをして尻尾を静かに振っている、

「たまらなく可愛い、よーしよし」

このデッカい生き物の首から下をクシャクシャした、頭まで手が届かない。

 

 スカイドッグの手綱を持つデルタが

「この子に乗れるようにならなければいけません、クリスは本日はお乗りになりますか?」

「はい、はいお乗りになります、ワンちゃん、乗って良い?」

スカイドッグに言うと牙を見せ唸って来た。

「あーごめん、ワンちゃんじゃないよね、デルタこの子なんて言うんだっけ?」

「スカイドッグです」

「デルタそれは種類の名前、そーじゃなくこの子のなまえ」

「ですからスカイドッグです」

「うーん・・・名前が付いていないのか、呼ぶ時不便だし、名前ないと味気ないよな、

スカイドッグ、おいでーなんて、可愛く無い・・・」


 俺は可愛い顔をまじまじ眺め、また首から下を撫でてあげた。

「うーん何が良いかな、しろいからしろ、また唸ってる、ダメか、うーん俺と同じモカは?モカフェルなんてどーだ?」


大きな尻尾をブンブン振ってワンワンと返事をしたようだ。

「よーしよし、お前はこれからモカフェルな」

突風が吹き付けているかの様に大きな尻尾を前後左右に振り回している。


 お座りの姿勢だと高くて背中を跨ぐことが出来ない、そこで

「ではモカフェル殿、私を乗せて頂けるでしょうか」

俺はテレビで見た騎士のセリフそのまま引用した。

モカフェルは乗りやすい様に伏せの体勢を取ってくれた。

「ありがとう」

と俺は跨いでみた。


「あれ?動かない?」

「クリス、モカに指令を出して下さい」

デルタに言われ

「あーそっか、飛べ! でいいのデルタ?うわぁーーああー」

気付いたたらもう地面に足は付いていない、上昇をしている。


モカの手綱をしっかり持って自転車の様にバランスを取る、直ぐに慣れて体重移動をモカが判断し、左右に動いてくれる。

「イヤホッー最高!!モカ凄い! 高い!飛んでる、飛んでる 俺は飛んでるいるぞー」

「ワンワン ワンワン」


 館の周りを飛ぶ、

「テッペンだぁ」

また上昇してくれる、上空から見る館が小さく見える。

「こんな建物になったんだ!!ホントにお城だ! すごくデカい! 映画で見る世界だ、


「早い、早い、ギャー、高い、高すぎるー」

嬉しい悲鳴とはまさにこの事だ!! 時間を忘れてずーっと飛んでいたかった。


 小さく見えるデルタとアーロン、下でデルタが呼んでいる様だ。

「クリスそろそろ降りて来てください」

「デルタの声が聞こえる、まるで電話をしているみたいだ」


 まだ遠くに見えるのに横にいるかの様に聞こえる。

「いきなり飛び続けるとモカに負担がかかります、そろそろ休ませて下さい」

「そっか、ごめんねモカ、降りようか」


まるでエレベーターに乗っているかの様な感覚、もう地面に足が着いている。

「すっごいよ、空を飛んだなんて、信じられない。モカありがとうまた乗せてね」

「わんわんわん」

又尻尾から突風が、


「モカ、この尻尾、嬉しいけどもう少し穏やかに振れないかな?」

左右大きくゆっくり振ってみせる。

「モカ、お前言葉がわかるの?」

「ワンワン」

「そっかわかるのかー、これからも宜しくな」


俺は空を飛んだんだ、飛べたこの感動が当分続きそうだ。

血沸き肉躍るとはこの事だ。

自転車を乗る様な気軽な感覚、なんて素敵な世界であるか、俺はモカから離れたく無かった。


人間が魔獣に懐いている変な風に見えるだろうか?

そんなの気にしない、とにかく大空を駆け抜けるあの感動は1度経験したら忘れられない、今日は興奮をして眠れそうもない。


あまりに俺がモカに懐いているのでデルタはモカを俺専用にしてくれた。

同じ部屋で寝起きして出かける時もいつでも一緒だ。

ペットなんてもんではない、俺の相棒?、俺が相棒。


タイトがヤキモチを焼いて火を吹いて来る、

「ゴメンゴメン、タイトは俺の半身なんだから他とは違うんだ」

と慰めてみた。



 戦いに勝った魔獣の魔素を体の取り込みその魔獣に変身をして能力も使える。

ところで変身していられる時間は?

空を飛ぶ魔獣を仕留めれば俺も飛べる様になるのか?


 アーロンに変身をしていられる時間を計ってもらった。

俺は熊族と狼族、2種のボスの能力がつかえる。


まずは狼になることを心で念じる、すると狼の外見になることが出来た。

早く走れる、前を走っていた鹿が疲れて来た様だが俺は全然平気。

持久力が物凄い。

牙も爪も鋭く森にいる魔獣たちは恐れ慄いている。


さて、時間は?

結構な時間が過ぎたがそのまま狼である。

うーん、これは望む限り、いや魔素が切れる限り変身が出来るのでは無いか。


 森の奥に入って行くと周りに迷惑をかけている大蠍が尻尾からシャカシャカ音をさせて威嚇をしている。

「毒針に気をつければ、大丈夫だ!」


俺は狼の牙で蠍の尻尾を食いちぎり次にクマへと変身をしてして蠍の頭をぶちのめした。

大蠍は死に絶えるとまた俺に魔素が流れて来た。

「今回は大蠍か、では次だ」


 森の魔獣を探してウロウロしていると今度は大蛇がトグロを巻いて口から長い舌を出している

「ウワーこれは見た目がグロテスク過ぎーだろう」

そう思ったが蛇の能力は絞める事も出来るし、獲物を一飲み見込みもできる、

案外便利な能力である


「よし、やるぞ!!」

狼に変身をして、噛みつき攻撃、何度も何度も噛みついて蛇を疲れさせる。

熊に変わって頭や胴体を殴り続ける、俺も疲れてヘロヘロになって来たところに

大蛇の魔素が流れて来た。


「おーこれで締め付けることが出来る」


 「魔獣の力が取り込めるのであれば、魔法使いの力は?」

「いやいや、それは考えてはダメだろう、魔法使いとはエルフである、それはダメだ、考えてはダメだ!!」

俺は自分にブレーキをかけ言い聞かした。


 最近熊族のバロンがアーロンから剣術を指南されている。

流石にクマの力は強くそのまま突っ込んで来られると流石に受け流す事が出来ない。

バロンは力でアーロンを押し込もうと必死である。

「バロン、力で押してもダメです、最も剣をよく見て」

アーロンは突っ込んでくるバロンの剣を払っていなす、直ぐに攻撃体制に入っていた。


「やっぱりアーロンはカッコイイ、俺も強くなりたい」


次に俺の番だ、

アーロンと向き合い一礼をする、

やはり今日もボッコボコに打ち負かされてしまった。


それを見ていた凛が

「マスターはなぜこんなにも打たれてしまうのでありんすか?」

「アーロンが強いから・・・」

「マスターもアーロン殿の剣をまともに受けずいなせば良いではないですか」

「確かにまともに受けても叩かれるだけ、それならいなしてみよう」


もう1度向き合い一礼をして今度は俺から突っ込んで行った。

何度も剣がぶつかり合い交わされた、剣をよく見て、アーロンが振りかぶる、俺はそれをいなして攻撃体制へと持って行く。


「凛、見た?ねぇみた?ぶっ叩かれなかったよ!やったね、アーロン」

「まぁまぁですかね」

アーロンから初めてちょっと褒められた。


   次回へ続く














 

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