転生したら魔法の世界で俺は強くなっていつか国王になってやる!!

@runahinamomoharu

第1話 魔法の種

 


  俺は魔法使いに憧れていた

 子供の頃にみた漫画、石造りの城に住み、杖を振ると目の前に飲み物や食べ物が浮いたままこちらにやってくる。なんと便利なんだ。

 

 母親のスカーフを首に巻き、台所から菜箸を持って来て鏡の前に立つ。杖に見立てた菜箸を降り

 「王様にな〜れ」と何回も唱える でも変わらない

 まだ修行が足りないのだ、と納得して毎日繰り返す、今思えばバカなことをしていた物だ。

 そんな自分を馬鹿にしながら、⋯⋯いや、いつか3つの願いを叶える魔神は現れる

 大人になっても魔法使いはきっといると心の片隅で思っていた。


 三十路を過ぎてもRPGにハマりゲーム三昧の日々、そんなある日、俺は買い物の為に来たコンビニの駐車場、1台も車が停まっていない、珍しい事もあるもんだと思いつつ、

 白っぽい煙が漂っている・・・何だこれ?

 近くには何も無い、当然喫煙者もいない、俺の方へフワフワと漂ってくる。

「うわー、吸い込んでしまった、何だこれ??」


 女の子がこちらのドアに向かって歩いて来た。その時向こうから黒い車が、駐車場に入って来たのにブレーキをかける気配がない・・・

 俺はとっさに女の子が轢かれない様自分がその子の前に出てしまった、

あーそんなぁ!・・・童貞のまま死ぬなんて、せめて1回ぐらい・・・魔法が使えれば

   

   ご愁傷さま・・・チン『鈴(りん)の音』

 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯


 「俺は死んじゃったのですか?」

 目の前にいるフワフワ浮いているジー様に尋ねた。

「残念だが車に撥ねられる女の子を救って代わりに死んでしまのだ、

 可哀想であるがなぁ~・・・」

「あのぉ、俺はどうなるのでしょう・・・」

「そうじゃな、気の毒なんで願いを言うてみぃ、叶えられるかは分からんがのぉ~」


 願いか・・・いきなり言われても

 心のかた隅に隠していた願望がヒョコと顔を出した様に思えた。

「何でも良いのですか?」

「叶えてあげられるかは分からんが一応願いを言って見なされ」


 「では・・・魔法使いになりたいです」

「ほう、魔法使いとな、なかなか難しい願いではあるな・・・

 いくらワシでも人間を魔法使いに変えるのはちと困難であるな、

 ふむふむ、既にここに来る前に飲み込んだ種、今1度同じ魔法の種をあげよう、それを育てるのじゃ」

「種ですか?」


 どーやらジー様とは魔法使い・・・のようだ。

 魔法の世界とやらへ行って

 種とやらを、身体の中で育てて大きく出来れば魔法が使える人間となる・・・らしい。

 人間は魔術は使える様になるが魔法が使える様になるにはかなり困難の様である。


「ボーナスポイントも特別あげたからありがたく受け取るのじゃぞ~

 種を育てるのだぞ~

 修行をするのだぞ~」

 そう言ってジー様は消えて行ってしまった。


 今のは夢か幻か、現実にはあり得ない、ボーナスポイントって何だ?

「ほとんど説明も無しでわかるかぁ!!」


 しかしモワっとした煙の様なものが魔法の種だと言うので試しにそれを吸い込んだ、

 そして俺はジー様の言う世界へ飛んでいったようだ。


 このカルディア王国に来てしまった俺、モカ・クリスティアン・カトゥール 人族である。なぜか向こうの世界での名前も外見とも違う。若くなった様だ、案外イケメンでは無いか


 人族である為当然魔法など使えない、しかしジー様から貰った魔法の種

 これを大事に育てていけば絶対無理であるはずの魔法が、もしかして使える様になるかもしれない


 何でこの世界に飛ばされたのかも分からず、ただただジー様の言うとおり。

 本当なのか嘘なのか、信じられないが信じてみたい・・・

 だけど体は全く変わりない


 俺のイメージだと芽出て水を上げ根が育つ、そんな感じのものがお腹に入っているのでは?

 最初は言うのも憚られた小さな願望であったが時間経つにつれ期待がだんだん膨らんで来た。


 俺が飛んだ国、お決まりの中世の様な文化の世界である。

 王様がいる世界、貴族なんかもいて修行によっては魔術が使える事もあるようだ。


 魔術とは科学的な理論や技術、資源があれば理解可能な範囲での操作が出来る事象を指す様だ。


 此方の世界では俺は辺境伯の側室の子、立場的には弱く発言権などない

 父と呼んでいる人間の言うことが絶対であり逆らう事などあり得ない


 アーロン、俺とは従兄弟の関係になる。

 彼は国王の側近のエルフ族の父と人族の母を持つハーフエルフ、魔法使いである。

 

何故か何時も敬語で話す、イケメンである自分に酔うことのあるナルシストで、剣術、魔法何いずれも達人の域を超えている。

 俺の兄貴分で毎日文句を言いながら面倒を見てくれている


 そしてエルフは皆魔法使いである。其々エルフによって使える魔法も魔素量も変わってくる様だ。 

魔法使いには皆それぞれ使い魔がいる。使い魔はその魔法使いのみに使え、他の魔法使いの言うことは一切聞かない、聞く耳を持っていない


 

 街中は賑わう露天商が建ち並び、移動はだいたい馬車を使う。

 普通と違うのは空を飛ぶ魔獣がいる事


 スカイドッグと呼ばれる超大型のゴールデンレトリバーの様な外見に大きな翼と角を持つ魔獣、人を乗せて大空を羽ばたくことができる。


 それ以外にも力の強い獣人族や鉱山を掘るドアーフといった種族も村を形成して生活を送っている。


 「そして可愛いドラゴン、タイト。クリスの使い魔であるドラゴンダァー 」 (ぼぁと火を吐く)

 ドラゴン!!・・・の妖精(?)訳あってクリスに付き従う相棒みたいなもんだ。

 俺がいないとクリスはなーにもできねぇ

 俺はそう思ってる。


 アーロンとデルタとクリスで俺の卵を発見をした。

俺がこの世に誕生した時に最初に見たのがクリスだった。

 だからかな、何故かクリスにくっ付いているんだな。


 ドラゴンの卵を僻地から持ち出してエルフの長に魔法を掛けてもらい孵化したミニドラゴン

 肉をあまり好まずクッキーやケーキなど甘い者が大好きな変な奴

 人が話す口の動きを学んで言葉を発する様になった学習能力の高いドラゴンである。


 見た目可愛い子ワニの様な外見に翼を持っている、怒るとすぐに火を吹いて

 その炎は魔法でなければ消す事が出来ない

 ドラゴンの炎は普通の火とは違うのだった。

   ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

 

 今日もアーロンが寝坊助のクリスを起こしにくる。

 コンコン、ノックをしても音沙汰なし、大体毎日の事である。

 施錠されていないドアを開けるとやはり口を開けて気持ちよさそうにまだ寝ている。


「クリス、起きて下さい、朝ですよ」

 優しく言っても起きてくれない、そこでアーロンは毎日起こす手段にオモチャのラッパを吹いてみる。

“パッパカパーパパパッパー”

 毎回驚いて飛び起きる、毎日のお約束だ。

 タイトが毎朝起こされるのでアーロンの部屋に避難をしている。


「あ、アーロン、おはよう、今日も過激だね」

「クリスおはよう、大体毎日寝坊ばかりしているのが悪いのです、

 いい加減自分で起きて下さい、私は朝の起こし屋!では無いのですよ!!」

 怒った口調でこれまたお約束の通り繰り返される会話。


「今日は剣術と魔法両方指南してさしあげましょう」

 ニヤリとするアーロンであるが寝起きのクリスにはその不敵な微笑みに気づいていなかった。

「はぁ、ありがとうございます」

「ではチャチャっと朝食を」

 パンとスープが魔法で用意されていた。

 そしてこれも毎度のお約束、

「いいな、アーロン俺も魔法が使える様になりたいよ、いいないいな」

 毎日同じことをクリスは言っている。

 これが毎朝の流れであった。


 ちゃっちゃっと朝食を済ませ動きやすい衣服に着替えポイっと外へ出されたクリス、

 強制的に木刀を持たされた。

 タイトは巻き込まれたらたまらないと再度避難をする。


 お互い向き合って一礼をする、

 いきなりイケメンアーロンが鬼の形相で向かってくる、

 木刀を振りかぶって頭を目掛けて振り下ろす、俺は何とか木刀を横にしてそれを受ける、

 あまりの衝撃で指先から腕まで痺れて感覚がない。

「まだまだ」と今度は横から木刀が腹を目掛けて薙ぎ払う。

 頭から、腹からと何度も木刀を受けていくうち

「あー今日こそこのまま死んじゃうかも・・・」

 気が遠くなっていく。


 ぴしゃぴしゃとアーロンの指から水滴がこぼれている、

「気づきましたか? はい、はい、お次は魔法の訓練をしましょう」

「あのぉ~俺は魔法をつかえません」

「知っていますよ、だから訓練なんです」


 そーいってアーロンは簡単な魔法だと、手のひらに小さな炎がポットと灯った。

「いいな、いいな、どーしても俺には出来ない」

 小さな子供がクズっている様だ。


「前にジー様がくれたと言う魔法の種、これをどうしたらイイのか全然分からん。

 なーにも説明をしてくれないのだ!分かるはずもない」

 俺は思い通りにならなくてイラついている。


「なぁタイト、俺って魔法の種って本当にあんの?」


 ドラゴンは魔法から生まれている

その為魔法が見える、見ることが出来るのだ。


「ジー様がそう言ったならあるんじゃねぇの?」

「みて分からないの?タイトはドラゴンじゃん、魔法を感じられるんじゃないの?」

 俺は膨れっ面で文句を言った。


「そー簡単に言うなよ、俺だってお前の体の中を探してんだぞ」

 タイトはお腹を突き出して両手を腰に当てて威張った姿勢で文句を言う。


「ねぇアーロン、俺魔法使いたいよ」

「毎日毎日そう願っているからいずれ魔法が顔を出すんじゃぁありませんか?」

「うん・・・種か、一体どーしろって言うんだ、ジー様、教えてくれぇー」

 俺は大声で叫んだ。


 いきなり小さな妖精が現れた。透明の羽を何枚も持ち小さく羽ばたいてフワフワと浮いている、見た目可愛いフェアリーだ。

「よぉ、クリス久しぶりだなぁ、なーにをを騒いでんだ??」

 アーロンの使い魔チャムである。


「前にジー様からもらった魔法の種、それがどこにあるのかも、どーしたらイイのかも分かんないんだよー」

「泣くなよ、イイ年して、しょーがねぇなぁ、おいタイトお前には種はみえねぇのか?」

 タイトに聞くチャム


「俺もさぁ、何となくモヤっとしたのは感じるんだ、おい、アーロンちょっと種を呼んでみ?」

 タイトが冗談の様にアーロンに言うが、


「呼んでみっと言われましてもねぇ、おーい魔法の種や、でておいでーてな感じですかね」

 冗談で言ったアーロンであったが

 クリスの口からもモアっとした煙みたいなもんが出て来た。

 マジ? まじ?


「ぼーっとしてないで早く瓶か何かに入れないと消えちゃうってバァ、」

 チャムがアーロンを急かすので魔法で小瓶を出し、蓋を開け瓶の口を煙の先へと持った言った。

 スルスルっと薄靄の様な煙が瓶へ吸い込まれたので蓋をした。


「OKこれで隠れていた種が見つかったぜ、この後は、うーん、うーん」

 小さな妖精が腕組みをして悩んでいる。

「そうだ、お前、クリスの赤い水それをあげるんだ!!」

 チャムが勢いよく言ってきた。


「クリスの赤い水?もしかして血のこと?

 アーロンが疑い深く聞くが、

「そうそう、それそれ赤いのを毎日1滴ずつあげるんだ、きっと成長するぜ」

「ほーー種が成長するね・・・」

 俺は俄に信じられなかったがチャムが言うなら従ってみよかな。


 朝叩き起こされ眠い目を擦りながら針で指先をつく、赤い血が1滴瓶に落とされる。

 これを毎日繰り返せばイイだけ?

 そんな簡単では無いだろう、俺は疑い深い


 剣術指南のアーロンは毎日颯爽と俺を誘ってくる、

「今日も木刀を持って、ささ、いきましょう」

 俺は毎日大変な役目を負わせ申し訳ないといつもアーロンへ詫びていた。

 まさかアーロンが俺を痛ぶって楽しんでいるなどと梅雨知らず・・・


  何日も経った頃、剣術の練習の後俺は父親である辺境伯に呼ばれた。

 厳つい顔をしていかにも生まれの良さそうな貴族って感じの壮年な紳士だ

 必要以上は俺と話しをしない。

 側室の息子はきっと可愛く無いのであろう、この父を前にすると愛情などみ微塵もない、いつもそう感じる。


「私が所有する辺境の地、森が土地の多くを占め獣人も多く隠れ住む。

 今までは構わず何も手をつけてこなかった。クリスティアン、そろそろ成人であるがゆえ領地を与えようと考える。そこで辺境の地を再生してみるのだ。必要な資金は全て用意しよう、だからお前の裁量で辺境の地を変えてみせよ」


 いきなり言われ、反論など出来る訳もなく、俺は言われた通り辺境の地へと送り出されてしまった。


 まじ?マジ?


  次回へ続く

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