復讐の再誕者、学園潜入す。~異能隠して最強がバレるまで~
冬葉
第1話:始まりの日
人生1周目、俺はとある小さな国で騎士をしていた。
そこは、絶えず侵略戦争に晒される小さな国だった。
俺は国を守るために、子どもながら魔術に剣術を学んだ。
それらを教えてくれた師匠の指導もさることながら、俺の身体は魔術と剣術を異常な速度で吸収していった。
そして、それを実際の戦いで磨きをかけた。
気がつけば敵国の騎士団を1人で撃退できるまでに。
そして俺は、侵略してくる敵国の騎士団たちと戦い続けた。
しかし俺は死んだ。
終わりの見えない戦いに精神は疲弊し、大型魔術にハイレベルな剣術を多用しすぎたせいで身体は限界に達した。
結局俺は国を救えなかった。
そんな人生を振り返ってみると、改めて平穏とは対極なものだったと思う。
だからこそ俺は、この人生2周目では平穏な生活を追求しようと決心した。
*****
俺の名はアーク。朝、木漏れ日が差し込む窓から、俺はゆっくりと身を起こした。
鳥のさえずりが心地よい目覚めを促し、風が運ぶ草の香りが、鼻腔をくすぐる。
村はまだ静かで、遠くから聞こえるのは、川のせせらぎと、小鳥の鳴き声。
俺はパンと、淹れたてのハーブティーを口にする。特別なことは何もない。
ただ、この当たり前の温かさを、人生1周目では味わうことができなかった。
今の俺が何よりも守りたい「日常」だ。
離れたところには、栄えている王国があり、ここはそこから離れた自然に囲まれた小さな村。
村の人たちは皆優しく、とても居心地が良いものだった。
ここでの生活は、俺にとって何よりも尊い、穏やかな時間だ。
「なのに…それなのに…。」
俺は物資の調達のため、半日ほど町を離れた。
そして今、町に帰ってきたのだが…。
町が燃えている。
そして、王国の騎士団と思われる兵士たちが村人を殺し、町を焼き払っていた。
俺はその騎士団に襲われている村人の1人を発見。
身体強化を使い一気に騎士団に接近し、そして騎士団を突き飛ばす。
この身体強化は1周目の人生で会得したもの。
一時的に、単純な筋力から聴力などの五感まで強化できるというものだ。
そして村人の状態を確認する。
かなり瀕死の状態だ。
もう助からないだろう…。
死に際、その村人は俺がいない間に村で何が起こったのか教えてくれた。
突然、王国の騎士団が村を訪れたこと。
ここを立ち退かなければ皆殺しにするということ。
この村の住民は、皆この村を愛していた。
だから騎士団の申し出を断ったのだろう。
…。
胸の中から沸き立つ怒りの感情を抑えながら、俺は心の中で呟く。
『そうか…ここでも俺は救えなかったのか。』
俺は力尽きた村人をそっと優しく寝かせる。
そして、燃え上がる村の中を突き進む。
この炎、おそらく炎魔術によるものだろう。
そして俺はこの状況をもたらしたであろう騎士団を見つける。
ざっと見て20〜30人ほどか。
その騎士団達は笑いながら何かを話している。
「ちっ、使える奴がいたら何人か連れ去るよう言われてたんだけどなあ」
「こんな価値のねえ場所のために抵抗するとか、馬鹿しかいねえのか?」
そんな騎士団達の話を聞きながら、俺は彼らに歩いて近づく。
すると、騎士団の兵士たちも俺の存在に気がついたようだ。
「なんだあ?まだ生き残りがいたのか?」
そう言った1人の兵士が俺に近づいてくる。
「なぜ村を襲った?なぜ村人を殺した?」
俺は怒りを抑えながら、殺す前に尋ねる。
「あ?そんなの国王の命令だからだよ」
「領土を広げたり、物資を調達したりするのにここが邪魔だからじゃねえか?」
「それに、ここに住んでる奴は魔術や剣術を使える奴が誰一人いないんだろ?」
「そんな無能しかいない村なんざ殺されて当然だろ?」
俺に近づいてきた兵士がそう言うと、後ろにいる兵士たちも嘲笑うように俺を見る。
彼らの防具にはこの町から離れた王国の国旗が記されている。
「何もできない雑魚はただ殺されるしかねえんだよ!」
そういうと剣を振り上げ、俺に振り
そして俺は覚悟を決める。
それはここにいる騎士団を一掃するというものではなく、もっと大きな決断だ。
『復讐する。』
1周目の人生と同様に俺は救えなかった。
町を人を。
それでも、違う点もある。
それは、俺が生きているということだ。
長い道のりになるかもしれない。
俺はその第一歩を踏み出す。
「そうか、じゃあお前らは死ぬしかないな。」
「はあ?なに寝ぼけたこと言ってんだよっ!」
俺は右手を兵士に向けて魔術を放つ。
それは俺が愛した平穏との一時的な別れ。
「煉獄の
そういうと、黒い炎を纏った黒龍が俺の目の前まで近づいていた兵士を捉え、そのまま後ろの兵士もろども焼き尽くす。
「んああ!?、何だよ、これ、魔術を使える奴がいるなんざ、聞いて、な、」
俺は残っている騎士団、また生きている村人がいないか探した。
しかし、あるのは村人たちの死体だけ。
空には黒煙が上がる。
俺が先ほど放った煉獄の劫火の煙だ。
これは伝説の魔術。
魔術や剣術に長けた人間が多くいる王国だろうと、これを使える人間はいないだろう。
いずれ、異変に気づいた王国の騎士団たちがまたここにやってくる。
その前に、俺は姿を消してこれからについて考えることにしよう。
******
それから数時間が経ち、異変を感じた騎士団が町を訪れると派遣した兵士が全滅していることに気がつく。
そして急いで王国に帰り、国王に報告する。
「報告します!」
「派遣いたしました第一騎士団…全滅いたしました! 辺境の村…始まりの地にて、突如、黒煙が発生し、業火が噴き出し、全てを焼き尽くしました! 現場を確認しましたが、まるで…煉獄の劫火の痕のようでした…。」
その言葉に、部屋にいた騎士団長が絶句する。
騎士団の魔術師達は顔色を変える。
「煉獄の劫火だと? 馬鹿な!それは伝説の魔術、現代でそれを使用できる者はいないはずだ! 」
国王は立ち上がり、玉座を叩きつける。
「無価値な辺境の村ごときで、我が精鋭が全滅だと? 無能め! 直ちに原因を究明せよ! 犯人が誰であろうと、地の果てまで追い詰めろ!」
国王はこの事件の犯人を重要指名手配に指定し、王国の犯人捜索が、その日から始まった。
しかし、彼らはまだ知らなかった。
その煉獄の劫火が、自分たちが無価値と切り捨てた村の、たった一人の生き残りの怒りから放たれたものだということを。
これは、全てを失った少年が、偽りの日常の中で新たな光を見つける、復讐と再生の物語。
次の更新予定
3日ごと 18:00 予定は変更される可能性があります
復讐の再誕者、学園潜入す。~異能隠して最強がバレるまで~ 冬葉 @bochibocchi
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