第2話
キッチンへ入ると、既に後藤さんがいて食卓の準備をしていた。
私と紅葉さんの気配に気づいたのか、にっこりと微笑んでくる。
「おはようございます、紅葉さんと伊藤さん。ご飯が出来たので座ってください!」
「ありがとう、隆哉。」
「ありがとうございます、後藤さん。」
それぞれ私達は指定された場所へ座る。
目の前には温かいご飯に味噌汁、玉子焼きに、豆腐入りの野菜炒めに、ぬか漬け入りの茄子ときゅうりに大根がある。
飲み物は私には温かいお茶。
茶葉のいい香りが、一段と心を穏やかにさせた。
「いただきますーーー!」
まずは、じゃがいもとわかめ入りの味噌汁を口につける。
「美味しいです。」
「そ?ありがとう。」
にこっと笑う私の側では、何故か後藤さんが不機嫌そうな表情をしている。
ん?
【隆哉、これだけで焼きもちやかないの!】
紅葉さんが小声で何か話しかけているのが見えて。
それを見た櫂さんは、何故か苦笑いをしていた。
不思議そうに首を傾けた私に気がついたのか、気まずそうに後藤さんが味噌汁へ口をつく。
「美味しいっす!」
「良かった。」
にっこりと笑った櫂さんも味噌汁へ口をつけていた。
「あの、ここではテレビはつけないんですな?」
何気ない質問に、皆さんの動きが止まった。
ん?
「ワイドショーなんて同じなものばかりだから見ない事にしているの。」
「そうだな、俺は新聞だけでいい。」
机に置かれてある経済新聞を見て、櫂さんはどや顔をする。
「そ、そうなんですね。」
「ああ、その代わりに夜はバラエティーやドラマ等は見てもいいからね、伊藤さん。」
「あ、ありがとうございます。」
お礼を告げたけれども、なんとなく違和感を感じてしまう。
でも、記憶が無い私の身元保証人になってくれただけで感謝しなくちゃ。
「そう言えば、後藤さんは何の仕事をするんですか?」
「ん、俺か?簡単に話せばパソコンを使いながらの情報処理みたいなものかな。」
「え、凄いですね!」
「いや、それほどでも。」
尊敬の眼差しで見る私に後藤さんは嬉しそうに照れる。
「資格が必要じゃなかったか、それ。」
「ん?通信制の講座に通っていたからな。もちろん試験も受けたぜ!まあ、基礎だけどな。でも、会社には研修もあるから心配はしないでもいいかなと思っている。」
「研修ね?まあ、隆哉は要領がいいからな。大丈夫だろうな、、、たぶん。」
どや顔をする後藤さんに、櫂さんは苦笑いをしていた。
「でも、それなら、新入社員なら残業は確実にあると思うのよね?話を聞いたら研修もあるみたいだし、何故海鈴ちゃんの付き添いを申し出たの?」
「確かにそうですよね。付き合いとかもありそうですし。」
「ん?帰ってきてからでも出来るぜ。俺はタフだからな。」
紅葉さんの不安な表情を見た後藤さんは、どや顔をしながらにかっと笑った。
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