第3話




タフって。



新入社員だと先輩とかの絡みで気を使うと思うのですが。



「新入社員を舐めるな、隆哉。」


私の思った通り、櫂さんは呆れたように溜息をつく。



「え、だって俺ボウソウ…………、いや。ゴホンゴホン。」


暴走族の総長だったからを言いそうになった後藤さんは、私を見て急に咳き込みだす。



ん?ボウソウ?って何ですか。



記憶を失っているせいか、そういう話はわからなくて首を傾ける。



事情を知っていそうな、櫂さんや紅葉さんは顔を引き攣らせているし。



なんなんだろう。



私の疑問が顔に出たのか、櫂さんと紅葉さんが困ったように顔を見合わせている。




「隆哉、海鈴ちゃんは記憶を失っているのよ?発言には気をつけてよね。」


「は、はい。気をつけます。」


紅葉さんの鋭い眼差しに、後藤さんは萎縮してしまう。



まるで、子犬のように小さく見える。



「あ、あの、私は別に大丈夫です。記憶を失っているから仕方がない事で、後藤さん気にしないでくださいね。」



「伊藤さん、ありがとうございます!」 


にこりと微笑んだ私に後藤さんは感動をしている。



「……………これでも、だったのかねぇ。」


後藤さんの姿を見た櫂さんが呆れたように溜息をついていて。



それを見る後藤さんが、櫂さんへちらりと意味深に見つめていた。



な、なんなんだろう。


櫂さんと後藤さんの雰囲気。



戸惑いに思いながら二人を見る私に気づいたのか、紅葉さんが深く溜息をつく。


 


「二人とも仕事なんでしょ?」


「あ、そうだった!行かないといけないな、隆哉も行くぞ?新入社員だろ。」


「はっ!あとはよろしくね、伊藤さん!」


我に変わった後藤さんは立ち上がり、側に置いてある鞄とジャケットを手に取り、すでに歩いている櫂さんのあとを追っていく。


「二人とも、いってらっしゃーい!」

歩いていく二人へ向けて声を出す。


すると、くるりと身体を翻した二人は何故か顔が真っ赤になっている。


ん?


「まったく、、、。」


その様子を見て、紅葉さんは呆れたように溜息をつき。



「さっさと行きなさいーーー、いくら海鈴ちゃんが可愛いからって見惚れないでよ、お兄様!」


...........。


え?



紅葉さんの叫ぶ声が聞こえたのか、櫂さんは慌てて身体の向きを変えて走り出す。



「あ!櫂さんーーー、待ってくださいよー」


それに続けて後藤さんまで走っていってしまった。


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鳥籠の中にいた小鳥は空をみる ほしのしまのにゃんこ @minajuki

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