第1話
私の名前は伊藤海鈴(いとうかいり)。
本来なら高校を卒業して、今は大学か就職で頑張っているはずなのに。
なんと、記憶喪失になっていたらしいのよね。
そんな馬鹿なとは思ってはいたけれど、確かに記憶を辿っていけば。
目が覚めた時は、何故か病院にいて個室の病棟に入院していて。
最初は名前もわからない、家族さえもわからない。
そんな話、現実にはあり得るのかって思ったけど、本当に自分が誰だかわからなかったんだっけ。
入院している事でさえ、ね?
そんな時に、身元引受人として現れた櫂さんや紅葉さんを見て固まってしまった。
かなりのイケメンにスタイル抜群な櫂さん、日本人形のような美人の紅葉さんが現れて唖然としてしまったんだ。
家族じゃないよね?
だって全然似ていないじゃない。
それに、こういう時って普通は身内が来るのよね?
先生曰く、ご両親は忙しくて代わりに友人がいらっしゃたんだ。
君のね?
その話を聞いた私は固まってしまった。
暫く興奮状態だった時は、面会禁止にはしてはいたけれど、と先生は顔を曇らせていた。
運び込まれた時の記憶が全くなくて。
先生は詳しい事は教えてはくれなかったけど、目覚めた頃の身体は至る所に包帯が巻かれていた。
苦痛を伴う痛みもあり、魘される事もあって。
鎮静剤と精神を安定させる為の投与、生理食塩水等。
生きていく為には必要な処置を施されていたらしい。
どれぐらい集中治療室にいたのかはわからないし、個室にも移動された。
カレンダーは禁止になっていて、白い壁に囲まれたまま過ごしていた。
そうやって過ごしていき退院となって、日々過ごしていく中、現れたのかあの彼だった。
どう見ても、高校生ですよね。
だって制服を着用しているもの。
見ず知らずの人が近寄ってきた時は、心臓が止まるかと思ってしまった。
かなりのイケメンだとしても。
それに、櫂さんや紅葉さんも驚きのあまり顔を引き攣らせていたのも見えた。
えっと………………、、、。
あまりの行動力の高さに固まっていると、笑顔を見せてくる。
かなりのイケメンだし、何故高校生なのに色気が凄いんですか?
密かに負けてしまったと思ってしまったのは心に閉じ込める。
「初めまして。」
から話す声も低い声なのに、聞いていて不快感をしない。
心地よい声に少しだけ胸が高鳴った。
初めて会うのに何故なんだろう。
それから、何故か後藤さんとも一緒に住む事になってしまった。
家ではなく別荘だから来客用はあるよ、とは言ってはいたけれど。
本当にいいのだろうか。うん。
あまり言わないでおこう。
だって、本来なら私も部外者なんだと思う。
こういう時、本当に記憶が無いのは不便よね。
小さく溜息をついた。
確か、後藤さんって働いているのよね。
仕事は大丈夫なのだろうか。
勝手口から歩く事数分、炊きたてのご飯のいい香りが鼻を掠める。
「美味しそうな匂い♪」
紅葉さんが笑顔になり、私まで頬が緩くなる。
ここでの調理は役割分担になっているらしく、今日は櫂さんの日らしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます