全てを破壊しすべての源となる
私は息を吸い、そして吐く。空は曇り、期限が悪いのか大雨が降る。地面はギザギザした岩肌が所々に盛り上がり、近くにある海からは海風が髪を巻き上げる。
「フン、こんな悪天候に小競り合いを起こすなんて、本当にはた迷惑な国だやつらは。そう思うだろう、人間兵器の娘」
「……」
私はなにも答えない。軍の上官はつまらなそうに舌打ちし、顎で前に出るように指示を出す。
その指示の通りに私は前に出て、前方の遠くから押し寄せる人間の大群を目にした。彼らの歓声は大地を揺らし、空を震撼させる。呼応するかのように海が激しく波打つ。しかし、私にはそのどれもが意味のない自然のうねりに見える。
私は意識を集中し、心の中で祈りをささげる。
「偉大なる破滅、美しき心をも潰す猛威、ここに顕現し無慈悲なる終わりを告げよ。『マングルディジェクション・テスカトリポカ』」
私は大魔法を発動する。周囲を威圧するほどの魔力の波動が迸り、狙っていた大群の上空より黒いオーラが出現した。それはあたかも巨人のような見た目に見えたかと思ったその瞬間、蒼白い閃光が世界を支配し、刹那、凄まじい衝撃波が上空から大群を押しつぶした。大地は砕け、空は空間を引き裂かんほどに揺れ、海は完全に押し流される。一瞬にして真っ赤な地獄と化した戦場は、やがて凄まじいエネルギーの高温で大火となり、人間だったものを容赦なく火葬する。燃やしてはならないものを燃やしたような罪悪感を感じる悪臭が、風に乗ってこちらに香ってきた。
「相変わらず容赦ないぜ。何度見ても恐怖を煽る属性だ。正直、俺はこの属性じゃなくて良かったって思うぜ。どの国の権力者も、この力を知れば全員が国を挙げて手に入れようとするだろうからな。感謝しろよ。お前がいる国は優しいからな」
軍の上官はそんなことを良い、私の頭に手を置いて何度もポンポンと叩く。私はその綺麗で光を反射する鎧に、自分の薄汚れた手を見比べて気持ち悪くなった。
ある日、世界は 後藤 悠慈 @yuji4633
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