八、*年前 ある地下

 やあ。

 わざわざ来てくれたのか。ありがとう。

 ご丁寧に菓子折りまで……。随分慣れてきたね、君のおかげかな?


 あぁ、そうだ。戻ろうと思ってね。


 なぁに。特に深い理由はないよ。

 ただ、そうだな……。古巣に帰りたくなったというだけさ。


 ちょうどあちらのモグラが引退すると聞いたからね。ならば私が、と後継に立候補したら受かったのさ。こちらと違って、あちらはあまり人気がない。


 ん? あぁ、おそらくあちらが終の住処になるだろう。君たちともここでさよならだ。

 ははっ。泣いてくれるのかい、ありがとう。

 私も君と会えてよかったよ。


 ……そんなに睨むなよ。君から奪おうとするわけがないだろう。


 この子かい?


 おいおい、睨まないであげてくれ。怖がっているじゃないか。


 え? 睨んでいない?

 それなら老眼か。君ももう若くないからね。


 痛っ。止めてくれよ。君と違って私は頑丈じゃないんだ。


 ——この子も連れて行こうと思ってね。私の後継だ。


 ほら、挨拶してごらん。


 すまないね、生意気なんだ。言葉の使い方はこれから教えるよ。


 え? 私と似てるって?

 止めてくれよ。私はもうこういうのからは卒業したんだ。


 ……君たちの息子にも、会えるといいな。


 いや絶対に男だよ。君たちの子どもは男だ。私の予想はよく当たるんだ。


 当たったら何か送ってくれ。そうだなぁ、落雁がいいね。形の綺麗なのをいくつか頼むよ。


 え? そりゃそうだよ。住所なんて教えるわけがない。


 はははっ。君が探しにくればいい。

 ……嘘だよ。そんなに何度も殴らないでくれ。


 私に会うときは、こちらのモグラに言ってくれ。そうしたら私からコンタクトを取ろう。


 あぁ、絶対だ。だからそんなに泣くのはもう止めて。そろそろ君の旦那に殺されそうだ。


 ではね。君たちの息子に会えることを楽しみにしているよ。

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