腹が減っては戦はできぬ!
「……というわけで、腹が減っては戦はできぬ!」
「いや、戦わないし! ていうか、もう終わったしさっきのチンピラ戦!」
とにかく飯だと言い張るアリエルに半ば押し切られる形で、俺たちは裏通りの食堂へと足を運ぶことになった。
外観は年季の入った木造の建物だが、中は清潔感があって落ち着く雰囲気。メニューを見てみると、よくわからない異世界語で書かれていたが、アリエルが勝手に注文してくれた。
「ここの《魔獣肉ステーキ》は絶品だ。異世界初心者でも食べやすいぞ」
「その響き、初心者向けかどうか微妙に怪しいけど……」
ほどなくして運ばれてきた料理は、見た目は普通にうまそうだった。肉厚でジューシーなステーキに、香ばしい匂いが食欲をそそる。
「……うまっ! なにこれ、めっちゃうまい!」
「ふふん、我の舌に狂いはない」
食事を終えて少し落ち着いた俺は、あらためてアリエルに尋ねた。
「ねえ、アリエルさん。俺、この世界に来たばかりなんだけど、これからどうすればいいのかな……?」
俺の問いに、アリエルは少しだけ真剣な顔になる。
「タクミ。貴様の《他力本願》、あれは間違いなくこの世界でも稀有な力だ。……そして、我の勘だが、貴様がこの世界に呼ばれたのは偶然ではあるまい」
「えっ、どういうこと?」
「この王国には、最近“世界の法則”が乱れ始めているという報告がある。魔力の流れ、精霊の沈黙、魔獣の凶暴化……。おそらく、それと貴様の転移には何らかの関係があるのだ」
「うわ、急にシリアス来た……!」
「だが安心せよ。貴様には我がついている。我ら“最強のコンビ”だからな!」
ぐっと拳を握って笑うアリエルに、俺もつい吹き出した。
「……頼りにしてます、隊長さん」
「うむっ! では明日、まずは王城に赴くぞ。異世界人の来訪となれば、王様に報告せねばなるまい」
「えっ、いきなり王様!? 早くない!?」
こうして――
異世界人・神崎タクミとポンコツ女騎士・アリエルの、出会って即コンビ結成・王様アポ取り・未知の冒険フラグが乱立する異世界生活は、ゆるくて慌ただしい滑り出しを見せるのだった。
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