第20話『新しい世界の扉を開けて』
翌日、放課後。
そらは学校の帰り道、少し不安げな気持ちを抱えながら歩いていた。
昨日、あれだけ決意を固めて周りに告げたものの、実際に音楽科に進むための手続きが始まると、どこか現実味を帯びてきたように思えて、胸が少し締め付けられるような感じがした。
「やっぱり、私、ちゃんとやれるのかな。」
思わず小さくつぶやく。
そらは深呼吸をし、ふと前方を見ると、そこに悠真が立っていた。
彼も今日、少し元気がなさそうに見えたけれど、そらに気づくといつものように微笑んだ。
「そら、元気ないけど、大丈夫か?」
悠真が心配そうに声をかけてきた。
「うん、大丈夫……かな。」
「そっか。でも、何かあったら言ってな。」
彼の言葉が心にじんわりと沁み込む。
「ありがとう、悠真。実は、ちょっとだけ不安なんだ。」
そらは少し顔をしかめながら答えた。
「音楽科に進むって決めたけれど、これで本当にうまくいくのか、まだわからなくて。」
「それは誰でも不安だよ。でも、そらなら大丈夫だと思うよ。」
悠真は笑顔を見せると、そらに向かって軽く肩を叩いた。
「それに、そらが音楽を大好きだってこと、みんな知ってるから。必ずやり遂げられるよ。」
そらはその言葉に少し力をもらうと、彼にお礼を言って歩き出した。
音楽の道は、決して簡単なものではない。けれど、今の自分にはその道を選んだことが間違いではなかったと信じたかった。
夕焼けの空がそらの気持ちにぴったり寄り添うように、暖かな光を差し込ませていた。
家に帰ると、両親がリビングで夕食の準備をしているのが見えた。
「おかえり、そら。今日はどうだった?」
母が振り返って、穏やかな笑顔を浮かべて声をかける。
「うん、今日も大丈夫だったよ。」
そらは軽くうなずきながら、玄関の靴を脱いでリビングに入る。
父が少し顔を上げて言った。
「そら、進路のこと、決まったんだな。」
「うん、音楽科に進むことにしたよ。」
その言葉に、両親の表情が少しだけ真剣になる。
「本当にそれでいいのか?」と父が静かに聞く。
「うん。自分で決めたことだから、後悔しない。」
そらはゆっくりと答えた。
母はそらの言葉を聞くと、嬉しそうに微笑んだ。
「そらが決めたことなら、応援するわ。だけど、辛いこともあるかもしれないから、いつでも頼ってね。」
その優しい言葉に、そらは胸が熱くなった。
その夜、そらは音楽科への進学に向けて、まずはオーディションの準備をしなければならないことを決意した。
何度も練習を繰り返し、歌声や楽器の演奏を思い通りにこなすために、細かい部分まで確認していった。
その過程で、そらは自分がどれほど音楽に対して情熱を持っているのか、再確認することができた。
翌日、学校では音楽科のオーディションについての詳細が発表された。
そらはその内容を目にした瞬間、少し緊張が走る。しかし、もう一度心を決めた。
自分はやるべきことをやり、悔いのないように全力を尽くすだけだ。
その思いが、そらを動かす力になった。
放課後、そらはオーディションに向けての練習を始めた。
その時、彩花がそっと声をかけてきた。
「そら、もう練習してるの?」
「うん、これからオーディションに向けて準備するんだ。」
「私も応援するから、頑張ってね。」
彩花の優しい笑顔が、そらを励ましてくれる。
「ありがとう、彩花。きっと、成功させるよ。」
そらはそう言って、再び練習に集中した。
その後、放課後の時間はあっという間に過ぎ、ついにオーディションの日がやってきた。
オーディション会場に到着したそらは、同じように緊張した面持ちの受験生たちが集まっているのを見た。
周りの競争相手たちも、それぞれに真剣な表情を浮かべている。
でも、そらはあえてその状況に流されないように、自分のペースで練習を繰り返した。
そして、いよいよ自分の番が来た。
「次、綾瀬そらさん。」
名前を呼ばれた瞬間、そらの心臓が大きく鼓動を打ったが、深呼吸をして、ステージに足を踏み出す。
「やるしかない。」
心の中で自分に言い聞かせながら、そらはステージの中央に立った。
音楽科のオーディション。
それはただの試験ではなく、自分の未来を切り開くための第一歩だ。
その思いを込めて、そらは一音一音に心を込めて歌い始めた。
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