第3話 交換条件01
「はぁ…、よっし。今日のお弁当はっと、この前作り置きしておいた胡麻和えと、昨日買ったほうれん草と卵の炒め物、それと焼鮭でいっか」
昨日、私は三部さんと少しの間だったものの情報量の多い会話をし、ラフスタのフォロワーである"ミストさん"の正体が三部さんであることを知った。
【こんな近くにフォロワーがいたとか、世間は狭いんだな…笑】
会話をした時、ついでに三部さんにお願いされて私のお弁当のおかずを一口分ほどわけた。その時の彼女の喜び方がとてつもなくて、大げさとまで言えるほどだった。
【おひたし一口であそこまで喜ぶもんなのかな…?普段、どんな食生活してるんだろう…。と言ってもまあ、褒められて悪い気はしないかな笑】
頭の中であれやこれやと考えながらお弁当のおかずを作っていたせいで無意識のうちに作りすぎていた。
「あっ…。やっちゃった…。どうしよう…?」
とりあえず自分と姉の分のお弁当を作り終え、取った写真をラフスタにあげようとした時思いついた。
【三部さん、あげたら食べてくれるかな?ラフスタのコメント機能で聞いてみよっかな。】
コメント欄を開き、小さな入れ物に入れた写真とメッセージを添付する。
『お弁当のおかずを作りすぎてしまったのですが、食べますか?』
私がそのコメント付きの投稿をアップするとそのすぐ後に返信が来た。
『まじ!?食べたい!!めっちゃありがとう!!!』
『いえ。じゃあ、学校に持っていきますね』
『うん!!まじでありがとう!!』
アプリを閉じて小さなお弁当と姉、自分の分のお弁当を包み、学校に向かった。
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キーンコーンカーンコーン♪キーンコーンカーンコーン♪
お昼のチャイムがなった。と同時に三部さんがこちらに走ってきた。
「優香ちゃ〜ん!お弁当、ちょーだい!」
「んっ!?えっ?み、三部さん!?」
「うん!もう、楽しみすぎてさ!チャイムと同時にダッシュしたよね笑」
「そ、そうですか…じゃあ、まあこれ、どうぞ」
私がお弁当袋から小さな入れ物を取り出し彼女の手の中に置いた。すると、三部さんはその入れ物を高らかに掲げ笑顔で謎の踊りを始めた。
「なに、してるんですか…?」
渡した瞬間に変な踊りをし始めたので、ドン引きしてしまい、警戒度マックスな表情で彼女を見てしまっていたらしい。
「そ、そんな顔で見ないでよ笑 めちゃくちゃ嬉しくてさ、つい体が動いたというか?笑」
「そうなんですか…。と、とにかく、食べたらその入れ物返してください。家で洗うので。」
「おっけ。じゃあ今ここで食べちゃうね!」
「えっ?ここで食べるんですか!?」
「う、うん。だめ?」
「い、いや…、その、お友達は?」
「あぁ、大丈夫だよ笑 それより、食べ物のが大事!」
そう言うと彼女は手を合わせるや否やすぐに入れ物のおかずを勢い良く食べはじめた。あまりにもいい食べっぷりなのと、美味し美味しいと一口ごとに言うのが面白くて、私は吹き出してしまった。
「…!わ、笑った!!」
「…えっ?あっ、すみません!その、あまりにもいい食べっぷりで笑 決して馬鹿にしているわけではないです!」
「あぁ、いいのいいの笑 そうじゃなく、初めて笑った顔見たなと」
「…えっ?そ、そりゃ私だって笑いますよ…//」
「そ、そうだよね!なんか、ごめんね!」
「「…。」」
なぜか二人とも気まずくなってしまい、数秒間の沈黙が流れた。なんとかしてこの沈黙を破りたかった私は、今までなら絶対に言わない様なことを口にした。
「そ、その、お弁当つくってきましょうか?姉が火曜日と金曜日はサークル活動でいないので、その日だけなら…」
「…ま、まじ!?いいの?!」
「は、はい…。週2の頻度ですけど、それでもいいなら」
「全然!むしろ、お願いしたい!どうしよう、めちゃくちゃ嬉しい!」
彼女は私の前の席に座り、私の顔を見て眩しい笑顔でありがとうと言った。
「じゃ、じゃあそれでっ!私、ちょ、ちょっとトイレに行ってくるので、それ食べ終わったら袋に入れておいてくださいっ!」
「あっ、ちょっと待って!」
「ーッ!な、なんですか?」
「そのさ、お弁当とかおかずもらったりしちゃって、私ばっかりになってるから、その…」
「これに関しては私が作りすぎちゃったので、大丈夫ですけど…」
「だめだよ!私が申し訳なくなる!」
「そ、そういうものですか…」
「うん!だから、お返しさせて!なんか私にして欲しいこととかある?」
「そ、そうですね…、じゃあ、放課後に勉強を教えて欲しいです。三部さん、頭がいいので。」
「えっ?それでいいの?」
「えっ?だめでした?三部さん、たくさん勉強してるから邪魔になっちゃいますかね…?」
「な、何故それをっ!?じゃなくて、全然いいいよ!て言っても、優香ちゃん頭いいし教えられることあんまりないと思うけど…」
「いいえ!三部さんは努力型の天才、その勉強方法を知るのだけでも価値があります!」
「そ、そう?//じゃあ、まあ、放課後一緒やろっか笑」
「はい!ありがとうございます!」
その会話を終わらせ、足早に私はトイレへと向かった。二人とも勢いだけで話を進めたせいか、色々と二人の間だけの約束ができた。けれど、私の心の中には不思議と後悔ではなく、期待感が残っていた。
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