お洒落ゾンビ【クウ】

 野暮用で弟のカイに電話し、成り行きでハロウィンの話題になった。カイはため息をついてぼやいた。

『クウ姉さん、明日は仮装するんでしょ。クオリティ高くしすぎないでよね。ハロウィンって、死者と生者の見分けがつかなくなるから嫌なんだよねえ……』

 幽霊が見えるとそんな苦労があるらしい。「職場の人をうっかり無視してしまって気まずい」だとか、愚痴が続く。

「わかった、気をつけるよ。鯉咲こっちにも霊感ある人いるかもだしね」

『やっぱ仮装するんだ。何着るの?』

「お洒落ゾンビ!」

『お洒落ゾンビかぁ……』


 お洒落ゾンビ【名詞】お洒落なゾンビ。身体的腐敗を強調しながらも衣装には別のコンセプトがあり、ダイナーウェイトレスやポリス、プリズナーやピエロなどの服を身につけている。楽しくてカワイイ。


「あれ、ダメだった? 死者ホンモノとの区別はつくでしょ」

『それが最近、お洒落ゾンビの仮装をするゾンビが出始めててね』

 死んでからも普通に着換えられるんだ。それとも根性ある死者なんだろうか。

 翌日は平日金曜日。ゾンビになった赤ずきんちゃんが職場へバイクをかっ飛ばすと、待ち構えていたミイラ男が「おはようございます」と椅子の背もたれを鳴らした。


(2025/10)

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