高校一年、誕生日【真白】
「ハッピーバースデー真白! クラッカーどかん!」
「朝七時に来ないでください、ドアぴしゃん」
三月末日の朝早く、部活の先輩が玄関先に現れた。門前払いするわけにもいかず一応ドアを開けたが、こちらは今起きたところだし、このスウェットは実を言うと寝巻きである。
「おととい来てください。もしくは二時間後に来てください」
「りょーかい!」
ちなみにドカンだのピシャンだののオノマトペは口で言ったものだ。さすがに朝っぱらから住宅街で爆発音を響かせるほどの非常識さはこの人にもなかったらしい。
青梅ヶ原クウ先輩とは家が近く、部活のあと一緒に帰るなどして仲良くなった。家が近い利点としてはもうひとつ、春休みのような長期休暇でも遊びやすい点が挙げられるが、まさか誕生日に突撃されるとは。
洗面所に行くと妹がいた。歯ブラシを片手に「兄さんおはよう……」と振り返る。そして首を傾げた。
「なんか、にやけてる?」
「にやけてない」
妹を追い払い、顔を洗う。鏡を見ると寝癖がついていたが、普段より高めの位置でひとくくりにすれば誤魔化せそうな跳ね方だった。
◻︎◻︎◻︎
そして九時、今度は携帯電話ではなくインターフォンが鳴る。
「来年は初めっからこの時間に来てくださいよ」
「これあげる、ケーキ代わりね!」
「聞いてます?」
透明ケースに収まったマカロンを受け取り、ため息をつく。掌でリボンがカサ、と鳴った。
このときは、まだ知らなかった。来年の今頃、先輩は留学してしまって、うちには来ない。
「あとこれクラッカーね!」
「室内で鳴らしましょう、せめて」
(2014/3)
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