大人になった瞬間
窮鼠猫
第1話
大人になったのと感じる瞬間が、人生の中で何度かある。
自分の誕生日を気づいたら迎えていたとき。クリスマスやエイプリルフールをカレンダーの通知で気づいたとき。
そういった、子どもの頃に待ち遠しかった行事を、ただの1日として認識するようになった瞬間。他にも、苦手だった食べ物を、久しぶりに食べてみると、おいしさを見つけたとき。
これらの感覚的成長、身体的成長を過去と比較したときに、人は大人になったのだなと感じると思う。私も同意見である。時間とともに変化した価値観が、時には無関心さが、自分を大人になったのだと感じさせる。うれしいことのようで、少し心が荒んでしまった悲しさもある。
そして私は、もう一つ大人になったなと感じる瞬間がある。それは、自己防衛の仕方を学び、それを実践しているときだ。
過去に傷ついた経験、折れかかってしまった経験から、自分を守るすべを身につけたときに大人になったなと思うのだ。
相手の行動に対して、まあいんじゃないかと他人的な立場として、深く関わらないようにしたり。相手に対して強い気持ちを持っていても、また一方的になって、裏切られてしまうのではないか、調子に乗ってはいけない、と自警の年を唱えたり。相手の行動にそうではない可能性があるから踏みとどまろう、と煮え切らないはらわたをやけどを恐れて人に見せ無かったり。
そんな、無関心をよそ覆い、相手に踏み込むのを辞め、自分の気持ちに蓋をする。
そんな、自分の殻に閉じこもり、傷つくよりはその方がましだ、と分かっていても動けない瞬間に私は臆病にも大人になったのだなと感じる。
失敗を恐れるのとはまた別の自己防衛に徹底した、挑戦を認識できなくなった瞬間にまた厚い殻に身をしまうのだろう。
大人になった瞬間 窮鼠猫 @kyusoneko
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