第5話 追放へ

▽クララスティアside▽

 屋敷へ戻るとメイドを連れ自室へ急ぐ、グドウィンも元へアレ《ルパート》の加護と職能を調べることが可能だと伝えに行く前に、身だしなみを整える。一晩中あの男に抱かれていたので、流石にこのまま向かう訳には行かない。


「湯浴みのあとは、グドウィンにアレのことで話があると伝えくれるかしら」

「はい、あの……、昨晩はどちらへ?」

「出先で偶然に会った友人と、食事をして朝まで語り明かしたのよ」

「作用でしたか、旦那様とレオナール様のお二人が、奥様の不在を気にされてましたのでそのように伝えておきます」

「頼むわね」


 湯浴みを終えて身なりを整えると、グドウィンの執務室へと向かって行き、アレの加護と職能のことで聖司教が相談にのってくれることを伝えた。グドウィンはとても満足そうで、週末に行われる教会の集会に参加して、その時にアレを見てもらう運びになった。


 そして週末を迎えると、私の目の前でアレは聖司教から『存在しない加護と職能を授かった者』として異端者の裁定が下されると同時に、ミルド共生国への追放が言い渡される。


「異端者である貴様を、セトレア聖国から穢れ者の国であるミルド共生国へと追放することとする」

「……承りました」


 全て私の思惑通りに事が運び、アレはミルド共生国へ追放処分となったことで、最愛のレオナールが男爵家の後継者となることが確定した。


▽メリージュンside▽

 中庭の一角で家庭教師に武術指南を受けていると、血相を変えた専属メイドが私の下へ駆け寄ってきた。愛するルパートがやって来た報告だと思い、持っていたアックスを手放して汗を拭き取る。


「はぁ、はぁっ、お嬢様! スタフォード家より使いの者が参りました……」

「あら珍しい、ルー君が来たのではないのね?」


 今日はルパートとお茶をする約束をしていたのに、本人ではなく使いの者が来たと聞いて、『都合が悪くなった』という報告だと思いテンションが下がる。ルパートが来れなくなったことを伝えるだけで、どうして血相を変えているのかと思っていると、専属メイドが信じられない言葉を口にした。


「ル、ルパート様が教会の聖司教様に異端者認定され、ミルド共生国への追放処分を言い渡されました。処分は速やかに執行されたとのことです」

「ルーが異端者? ミルドへ追放? いったいどういうことなの!」

「何でも存在しない加護と職能をさずかったらしく、聖司教様に確認をして頂いたそうです」

「そんな……、ルー君……」


 愛するルパートが追放されたと聞いて、もう会うことが叶わないのかと思うと、目の前が真っ暗になりその場にへたり込んだ……。


◇後書き◇


ここまでで【第一章 始まりの編】は終了となります。

次話から【第二章 再会編】が始まります。崖から突き落とされたルパートはどうなったのか? 授かった加護と職能の内容が徐々に明らかになっていくのか? 引き続きお楽しみ下さい。

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