第4話 異端者認定

▽クラリスティアside▽

 グドウィンにアレルパートの加護と職能について一任されたので、裏ギルドへ足を運んで依頼をする。


「我が家のゴミを排除したいのよ。謎の加護と職能を授かったみたいで、それを逆手に男爵家から追い出したいのよ。こっちの希望通りに働く教会関係者を、多少は高額になっても良いから紹介してくれない?」

「奥様、一人だけ思い当たる方が居るのですが、依頼人との直接交渉しか受け付けない変わり者で……」


 面倒な相手っぽいので拒否したいところだが、アレを排除するには直接交渉をするしかない。全てはレオナールのためだと思い了承した。


「判ったわ。手配をして頂戴」

「かしこまりました」


 手配を頼んでから数日が経ち、裏ギルドから交渉する日時と場所の連絡がきた。私は指定されたホテルの一室を訪れると、そこには聖職者とは程遠い中年の男が待っていた。身なりを見れば聖職者で間違いはないが、着こなしが非常にだらしなかった。胸元や袖のボタンは外れ、常に身に着けているべき四大加護をあしらったペンダントが机の上に『ポン』と置かれていた。


(こんな人が役に立つのかしら?)


 そんなことを思いながらも、聖職者に違いはないのでとりあえず話だけしてみる。


「こんにちは、私はスタフォード男爵夫人のクラリスティアよ。貴方が私の望みを叶えてくださるのかしら?」

「望みについては内容と報酬次第ですな。これでも、アルドマン聖領の聖司教をしているので、それなりの力は持ってるからね」


 男は名前を口にしなかったが、立場を説明し終えると『ニヤリ』と笑みを浮かべながら席へ座るように促した。私は彼が本当に聖司教なのか疑いながらも、そうであるなら私の望みを叶えることができるので、とりあえず席に着いて交渉を始めることにした。


「貴方が聖司教なら話が早いわ。私の愚息がアルテマの加護と万能職マルテ厶の職能を授かったの。この2つについて何かご存知?」

「いや、そんな加護や職能は聞いたこともないな。ところで過去に例のない贈り物を授かった息子を愚息と呼ぶのですかな?」

「私が産んでないからよ。アレは妾の子なのに、先に産まれただけで男爵家の後継者なの。だからアレを排除したいから力を貸していただけない?」

「ほほぅ」


 男はそう言うと、私のことを嫌らしい目つきで舐めるように見る。この男から金銭的な要求はないと理解して、敢えてドレスの胸元を少し開けて挑発する。


「良いね。報酬は10万Rとこれから君を一晩中抱く権利だ」


 報酬は伝えられたが、排除する方法を教えてくれないので、私は身に着けたドレスを脱ぎ捨て男に排除の仕方を尋ねた。


「どのように排除するの?」

「教会で行われる集会の時に、私へ子息のことで相談するのです。その時に異端者認定の裁定を下すので、そのまま穢れの国へ追放すればいい。それで貴女の望みが叶うでしょう」

「素晴らしいわ! 契約を致しましょう」


 その後、私は一つ目の報酬てある10万Rを渡し、二つ目の報酬として朝まで身を委ね終えると、最高の気分で屋敷へと戻っていった。


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