第3話 千載一遇

▽クラリスティアside▽

 明日、アレルパートが15歳となり加護と職能を授かることになる。加護なしであれば最高だが、期待値から何かしらの加護と職能を授かるのは間違いない。授かった職能次第では、その職能の才能を伸ばすという名目で、裏ギルドの暗殺者を家庭教師につけ亡き者とする。そうすれば愛するレオナールを後継者にできるからだ。


 私がレオナールのためにすべきことが決まって、計画を進める準備に忙しい毎日を過ごしていると、いつも通りに家族3人で夕食を取っていると、アレルパートが加護と職能を授かったと報告をして来た。


「父さん、先ほど天啓があり【アルテマ】の加護と【万能職マルテ厶】の職能を授かりました」


 報告を聞いたグドウィンは、眉に皺を寄せ黙り込む。それは当然の反応で、アルテマの加護も万能職マルテ厶の職能も聞いたことがないからだ。そしてもう一つ気になるのは職能の階級で、アレは階級のことを口にしていなかった。


「その加護と職能は聞いたことがないのだが、天啓で何らかの説明があったのか?」

「ありません。どうすればよろしいでしょうか?」

「ふむ、その辺りに詳しい者に聞くしかないな。私の知り合いに心当たりがないかあたっておく」

「ありがとうございます」


 2人の会話を聞いて、これは千載一遇のチャンスが訪れたと思った。私はこのチャンスを逃さないためにグドウィンに声をかける。


「あなた、私の知り合いに詳しい人がいるの。その方に聞いてみましょうか?」

「おぉ、それは助かる。この件は全てティアに任せることにしよう」

「えぇ、全て私に任せてね」


 私の言った言葉は全くのデタラメで、そんな知り合いなんているわけがない。裏ギルドを通してアレを貶めるために良いアイデアが思いついたので、それを実行して邪魔者を排除するだけ。


(ふふっ、これでレオナールが後継者にすることができるわ)


▽レオナールside▽

 ヤツが天啓を受けて、加護と職能を授かったらしい……


 下民の分際で天啓を受けるとは生意気な。ただ、アルテマ万能職マルテ厶という聞いたこたもないもので、恐らく役に立たないものに違いないはずだ。母が知り合いにあたって、どのようなものなのか調べてくれるらしい。きっと四大加護や三大職能より遥かに劣るもので、その結果を聞いた父は、ヤツを後継者から外して、この僕を後継者に指名することだろう。そうなればメリージュンもヤツを見捨てて、僕の婚約者になると言ってくるだろう。


(ふふっ、これで全てを僕の手中に収めることができるぞ!)

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