第2話 思惑

※しばらく間は、主人公が追放されるまでの回想が続きます。


▽クラリスティアside▽

 私はアレルパートの存在が邪魔で仕方がない。


 アレルパートが存在するから、私の可愛い息子であるレオナールは、スタフォード男爵家を継ぐことができないからだ。この国では15歳になれば加護と職能を授かる。職能には階級があって、アレルパートの母の階級は超級スペルンで、私の階級は初級ビギナンだ。能力は遺伝する可能性が高いことを考えると、アレルパートの方が優秀になる確率は非常に高い。


 そこで授かる加護と職能は判らないが、事前に階級の期待値のようなものは計測できるらしいので、2人の息子の期待値を調べることにした。レオナールの数値が高ければ問題ないので静観するが、アレルパートの方が高い場合は排除する手段を考える必要がある。


 数日が経って、期待値を計測できるという教会の関係者を屋敷に招き、2人の期待値を計測してもらうのだが、2人の名前は伏せておくことにした。もし、アレの期待値が高過ぎて、そのことが噂になるかも知れないからだ。なので2人にも計測のことは伏せておいて、来客が来たとだけ伝えて、挨拶をするタイミングで2人の計測をさせて、計測結果は私だけが聞くこととした。


 そして教会関係者に2人を紹介し、挨拶をしたタイミングで期待値を計測すると、私にとっては最悪の結果を聞かされたのだった……。


「奥様、プラチナヘアーの男の子は素晴らしいですね。期待値はなんと超級スペルンに届いていますよ。彼なら間違いなく立派な後継者になられるでしょう。そして残念なのはブロンドの男の子の方で、期待値はギリギリ初級ビギナンといったところでしょうか、下手をすれば加護を授かることがないかも知れません」


 血筋で言えば当然の結果かも知れないが、到底受け入れることはできない内容だ。なんとしてもアレルパートを貶める方法を模索して、最愛のレオナールを後継者にする。


 そのためなら、如何なる手段も問わないと心に決めたのだった。


▽レオナールside▽

 僕には腹違いの兄がいるが、ヤツの母は平民出身で穢れた下民だ。僕の母は高貴な伯爵家の血筋で、僕こそが真の後継者なのである。母も日頃から『アレは妾の子であって、正妻の子であるレオナールこそが、真の後継者なのよ』と言っているのだから間違いない。


 なのに屋敷で働く使用人達は、勉学・武術・マナーなど、全てにおいてヤツのすることを見習えと言ってくる。どうして高貴なる血を引く僕が、下民の血を引く者を見習う必要がある? 今は本気を出していないだけで、その気になれば全てにおいて僕が上回るというのに、本当に邪魔なヤツだ。


 まぁ、このようなことも加護と職能を授かるまでの我慢だ。高貴なる僕と下民とでは、格が違うということを見せつけてやるのだ。


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